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なぜアルコールは肝臓に悪い?たばこはどう?肝硬変と飲酒喫煙の関係

アルコール飲料であるお酒が肝臓に悪いのは言うまでもありません。でも、言うまでもなく悪いものが法律で禁止されることがないばかりか、「百薬の長」ともてはやされたりすると言うのも奇妙な感じですね。

実際、お酒には健康に資する部分もあるわけで、他の記事でもお酒の有用な部分と害毒の部分を、主に飲酒量と飲酒方法の面から紹介してきました。今回はもう一歩踏み込んで、アルコールがどのように肝臓を壊してゆくかを見てみましょう。

それによって健康的な飲酒方法が見つかれば幸いです。ついでに、たばこと肝臓に付いても触れてみます。肝臓がダメになると、たとえ生命が何とか維持できても、非常に生活の品質が落ちてしまいます。「死んでないだけ」にならないお酒の飲み方をしましょうね。

お酒はアルコールから分解される途中で様々な物質に変化する

お酒のアルコール成分であるエタノールは、示性式 CH3CH2OH で表される有機化合物です。皆さんが良くご存知の通りアルコールはよく燃えます。先の示性式に酸素分子O2を3つ結びつける燃焼反応が起こると、二酸化炭素2分子と水3分子ができて、過不足はありません。

CH3CH2OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2O

人間の体内でも、アルコールは最終的に二酸化炭素と水になって身体から排出されます。しかし、燃焼反応のようなシンプルなものではなく、いくつものステップを経て分解されてゆくのです。

最初は肝臓でアセトアルデヒドに代謝される

アルコールを飲むと主に小腸で吸収され、アルコール脱水素酵素(ADH)によって酸化され、アセトアルデヒド(示性式:CH3CHO)と言う物質に代謝されます。

CH3CH2OH → CH3CHO + H2 (酸化とは酸素と結びつく反応だけではなく、水素を失う反応のことでもあります。)

この時にはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)と言う電子伝達体が活躍しますが、説明が複雑になるので割愛して、関係する分子だけでお話しします。

さて、このアセトアルデヒドですが、毒性の高い物質として知られています。この毒性は、示性式の-CHOの部分(アルデヒド基)がたんぱく質と反応して凝固させてしまうことで起こっています。

つまり、肝臓の中でアルコールが代謝されてアセトアルデヒドになると、その段階でたんぱく質でできている肝臓の細胞が障害されてしまうのです。肝臓の細胞が障害されると、そこで行われているアルコールとアルデヒドの代謝活性が下がります。

つまり、お酒を飲むとお酒が分解しにくくなると言う現象が起こり、さらに肝臓の細胞が障害されると言う悪循環が起こります。一方で、肝臓は修復機能に優れた臓器ですので、お酒をストップすると、障害された細胞もどんどん回復してゆきます。

この障害と回復のバランスが、回復の方が早いうちは、そのうちアルコールやアルデヒドも代謝されて消えてくれますが、障害の方が早くなるようなお酒の量を、しかも回復が追い付かない速さで飲むと肝臓は壊れます。

この障害と回復の速度は個人差があって、特に問題になるのはアルコールより毒性が強いアセトアルデヒドの濃度です。

アセトアルデヒドも肝臓で酢酸に分解されるが個人差が大きい

さて、飲んだお酒から入ってきたアルコールが肝臓でアセトアルデヒドに代謝され、強い毒性を発揮するわけですが、それでは具合が悪いので次の酵素が働いてアセトアルデヒドを酢酸に分解します。

アセトアルデヒドの「アセト」は「酢酸(アセティック・アシッド)に関係する」と言う意味です。この時に働く酵素がアルデヒド脱水素酵素です。アルコールからアセトアルデヒドが作り出されたように、アセトアルデヒドを酸化することで酢酸(CH3COOH)を作り出しています。

CH3CHO + H2O → CH3COOH + H2 (実際にはNAD+や補酵素Aが関係した反応ですが、脱水素の工程だけを書きました。)

近年良く知られるようになった通り、このアルデヒド脱水素酵素を作り出す遺伝子に3パターンが存在しています。日本人を含むアジア人の多くでは、この酵素の活性が通常の1/16であったり、全く無かったりする人がおよそ半分を占めています。

そうした人では、有害なアセトアルデヒドが体内に残ったままになるので、お酒に非常に弱かったり、全く飲めなかったりします。このアセトアルデヒド脱水素酵素の遺伝子多型に関しては別の記事に詳しいので、そちらをご覧ください。

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アセトアルデヒドを酢酸に代謝するこの酵素の活性が高い人のほうが、活性の低い人よりお酒によって肝臓を壊しにくいのかと言うと、実は必ずしもそうとばかりは言えないのです。と言うのも、アセトアルデヒドは「顔が赤くなる・呼吸や心拍数が増える」と言う酔いをもたらします。

つまり、お酒に弱い人はお酒をたくさん飲めないので、アセトアルデヒドの生成量もそれほど多くなりません。一方、アセトアルデヒドを代謝できる人はたくさんお酒を飲めてしまいますので、次々とアセトアルデヒドも補充されてしまうわけです。

ですので、お酒に強い人の場合、節度ある飲酒量を守っていれば弱い人より肝臓にトラブルが起こることは少なくなるでしょうが、強いからと言ってたくさん飲むと、肝臓はその量に応じて壊れて行くのです。
アルデヒドと言うのは、飲酒によって発生する場合には、発がん性物質として指定されている物でもあります。くれぐれも節度ある飲酒を心がけて下さいね。

酢酸はエネルギーとして使われて分解されないと中性脂肪になる

酢酸はCH3COOHですが、これに炭素が2個と水素が4個追加されるとCH3(CH2)2COOHと言う示性式で表される酪酸になります。酪酸にさらに炭素・水素セットが2個追加されるとCH3(CH2)4COOHのカプロン酸になります。

このように伸長酵素によって炭素が追加されてゆくことで、例えば炭素が18個になった時にはステアリン酸と言う物質になります。このステアリン酸にΔ9不飽和化酵素が働くとオレイン酸になります。

このことから判るように、酢酸は短鎖脂肪酸なのです。つまり、酢酸が消費されないと、そのまま中性脂肪になってしまうと言うことになります。

アルコールを上手く代謝できると中性脂肪が増える

先のアルコール代謝のところで省略したニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)と言う電子伝達体ですが、今回はこれが主役になるので改めて解説します。

この電子伝達体は補酵素として働きます。アルコールを代謝する際には酸化型のNAD+が働いて、自身はNADHと言う還元型に変化します。

一方、アルコールが代謝されて出来上がった酢酸を、TCAサイクル(クエン酸回路)の中でエネルギーとして消費してゆく際にも、NAD+が消費されてNADHができると言う反応が重要な意味を持っています。

つまり、アルコールを代謝するためにNAD+が消費されると、TCAサイクルが上手く回らなくなって、エネルギーとして消費されにくくなるんですね。

さらに、このNAD+が枯渇してしまうとアルコールは代謝されず、酢酸も消費されなくなります。そうなると、余剰になったNADHを消費してNAD+を作り出すと言う逆向けの反応が促進されます。この化学反応の一つが酢酸を中性脂肪に作り替える働きなのです。

そうして生み出されたNAD+は、再びアルコールの代謝に使われ、どんどん中性脂肪が溜まることになります。お酒をよく飲む人では血液中の中性脂肪値が高くなりやすいのはこのためなのです。

そして、もちろん生み出された中性脂肪は肝臓にたっぷりと溜まり、アルコール性脂肪肝が出来上がると言うわけなのです。もちろん、全部が肝臓に溜まるわけではなく、血液中にも、他の内臓脂肪としてでも、様々な場所に悪影響を出します。

単純型アルコール性脂肪肝はお酒をやめれば良くなる

お酒の飲み過ぎで発生したアルコール性脂肪肝は、お酒をやめれば元に戻ります。にもかかわらず、行政解剖に付された死因不明の方の中には、死因がアルコール性脂肪肝であった人がかなり見られると言うことです。

つまり、アルコール性脂肪肝と診断された方で、お医者さんから禁酒を言い渡されたのに守れないと言う人は、むしろアルコール依存症の疑いが出てきます。

アルコール依存症は「否認の病気」とも言われます。上の文章を見て、「自分は好きで飲んでるだけでアルコール依存症じゃない」と思った人は、アルコール依存症の可能性が高いと認識して、治療に取り組まれることをお勧めします。

脂肪肝は酸化ストレスをもたらし肝臓を壊すこともある

アルコール性脂肪肝は、お酒をやめれば1か月程度と言う比較的短期間で改善してきます。一方で、アルコール性脂肪肝をもたらすNDA+の枯渇とNDAHの増加は酸化ストレスをもたらし、肝細胞の壊死に繋がることも知られています。

肝臓の細胞が死んでしまうと言うことは、肝炎であったり、肝硬変であったりと言う重い肝臓の病気に繋がってくる現象が、アルコール性脂肪肝の進展の裏側で発生していると言うことです。

アルコール性脂肪肝だから、そろそろお酒をやめて治療しようと決心した時には、既に裏でもっと重い肝臓病が進展していたと言うことにもなりかねません。

血中脂質の異常や脂肪肝を指摘されたら、あれこれ言い訳せずにその日から断酒することが生命を落とす可能性を減らす唯一の手立てなんです。

お酒は美味しいうえに習慣性のある飲料ですから厄介です。それでも、節度ある飲酒の量を守っていればこうした心配はありません。飲み過ぎにならないよう、いつも自制して下さいね。

肝臓は再生能力に優れた臓器だが限度はある

肝臓は非常に優れた再生能力を持っているだけではなく、もともと最低限必要な能力の何倍もの性能を持っているため、多少壊れたぐらいでは全く問題ありませんし、何の症状も現れません。

逆に言えば、肝臓が壊れてきたことで体調不調が現れてしまうと言うことは、肝臓の大半が壊れてしまっているとも言えるのです。その中には単純性脂肪肝のように原因を取り除けば回復するものも含まれています。

肝臓の傷も最初は傷跡になっている

これまでにお話ししてきたような原因で肝臓の細胞が破壊されると、いわばその部分で肝臓に傷がついていると言うような状態になっています。身体の一部が損傷すると、線維芽細胞と言う細胞がやってきてコラーゲン繊維で傷を修復します。

線維芽細胞は普通の細胞より分裂速度が早いので、こうした修復作業にはもってこいなのです。一方、肝臓の中にはビタミンAを貯蔵する肝星細胞と言う細胞もあって、これも同じ修復作業に携わります。

肝臓の細胞がお酒によって破壊されると、免疫細胞であるマクロファージがやってきて壊れた細胞を取り除き、そこへ線維芽細胞や肝星細胞がコラーゲン繊維を供給して穴埋めをします。

こうしてふさがれた部分は、いわば傷痕ですので肝臓の細胞としての働きを持っていません。取り敢えず傷をふさいでいるだけです。しかし、時間が経つと周囲の肝臓の細胞が分裂してコラーゲン繊維を置き換えて行き、元の状態に戻ります。

傷跡と傷の発生の繰り返しで取り返しがつかなくなる

一回だけの傷であれば、時間が経てば完全回復も充分望めます。しかし、修復したと思ったら正常な肝細胞で置き換えるいとまもなく、肝臓の持ち主がアルコールを飲んで肝細胞を破壊してゆくと言う繰り返しになるといけません。

傷跡の横に傷跡を繋ぎ、どんどん傷跡が大きくなって、ついには肝臓がコラーゲン繊維で置き換えられて機能を失って行くのです。これが肝硬変です。

先にお話しした通り、肝臓と言うのは最低限必要な機能の何倍もの大きさと性能を持っていますから、多少肝硬変になって再生不能になっても、残った部分だけでやって行けないことはありません。

しかし、肝硬変になった部分が増えて、残った部分だけでは機能が果たせなくなると、腹水がたまったり、黄疸が出たりと言う肝臓病特有の症状が現れてきます。

ウイルスなどによる肝炎でも同じような症状が出ますが、肝硬変の場合は治ることがありません。線維化した肝臓は元の肝細胞で置き換えられなくなってしまっているのです。

また、こうした症状に進展の最中には肝がんをもたらす可能性が高いことも知られています。肝がんは予後の悪い癌として有名ですね。そうした状態を引き起こさないよう、節度ある飲酒の量を守って下さい。

節度ある飲酒の量とは、厚生労働省が示している肝臓病などアルコール性疾患にかかる可能性を低く保つための飲酒の目安です。詳しいことは別の記事にありますのでそちらをどうぞ。

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肝星細胞は肝硬変の責任細胞とも言われて雄目されています。この細胞は発見者の伊東俊夫博士の名前を取って伊東細胞とも呼ばれているんですよ。

言うまでもなくたばこも肝臓に悪い

たばこは呼吸器や胃に悪いかもしれないけれど、肝臓とは関係ないのではないかとお思いの方もおられるでしょう。しかし、実はたばこと言うのは肝臓病の大きなリスクファクターなのです。

その範囲は肝炎・肝硬変から肝がんに至るまで、幅広い悪影響を持っていて、飲酒との相乗効果で肝臓を傷めてしまう場合もあるのです。

喫煙の肝臓病に対する影響は飲酒と同レベルである

まずは飲酒と喫煙を比較したデータから見てみましょう。

10.慢性肝炎・ 肝硬変

肝臓疾患といえば、飲酒の影響がすぐに考慮される。しかし、生活の影響をみると、飲酒と変わらない程度に、喫煙が影響している。

喫煙は、慢性肝炎や肝硬変を1.2倍起こしやすい。その影響の程度は飲酒と変わらないと報告されている(図5)。

喫煙と消化器疾患のリスクを表したグラフ

この論文は現在は個人医院の院長先生の手になるものですが、引用したデータは、この先生が部会チーフになってまとめられ、日本内科医学会の専門医会誌に掲載されたもので、信頼のおけるデータです。

たばこは恐らく肝臓がんのリスクを高める

やや控えめな見出しですが、これはこのデータを調べた国立がん研究センターの表現を借りたものです。国立がん研究センターは、JPHC Studyと言う、統計的な研究を行っているグループの筆頭株ですから、本当に確実でないとそうだとは断言しません。

でも、一般的な大学での研究なら「たばこが肝臓がんを呼ぶ」と断言するレベルより高い確実性のデータを持っているのではないかと思います。

集まっているデータだけでは、たばこは肝臓がんの原因の一つの言うことが示されていますが、大規模研究の中で、対象となった人々の肝炎ウイルス感染率が、完全に明らかになっていなかったことからこうした表現になっているのです。

喫煙は様々ながんの原因になっていること、現段階で集まったデータが肝臓がんと喫煙の関係を示唆していることから見て、肝臓がんとたばこの関係を否定することはできないと考えても差し支えないでしょう。

たばこは身体に悪いから禁煙しようと考えている人の中には、電子たばこに活路を見出そうとする人も、特に若い人には多いようです。しかし、電子たばこはお勧めしません。どうしても電子たばこが良いと言う人は正しい使い方をして下さい。

▼詳しくは関連記事をご覧ください。
電子タバコは副流煙やニコチンがゼロ?機器の劣化で超有害に!

メンソールたばこは肝臓に悪い?

「メンソールたばこを吸うと肝臓が痛い」と言うキーワードでこのサイトにたどり着かれた方がおられますが、それはあり得ません。と言うか、肝臓に痛みがあるならこの健康生活の情報では対処できませんので、すぐに専門病院に行って下さい。

肝臓に痛みと言う形で症状が現れたのであれば、かなり重症です。肝臓は回復可能なうちはほとんど症状を表さない臓器なのです。身体がだるいとか黄疸があるとかの症状がないのであれば、肝臓以外の病気かもしれません。

専門病院を訪れて、まずは血液検査と腹部エコーで内臓の検査をしてもらいましょう。

また、メンソールたばこだけに見られる毒性と言う物はありません。たばこそのものが身体に悪いので、もしメンソールたばこを吸って肝臓のあたりが痛いのであれば、普通のたばこでも痛みが出るでしょう。

ごくわずかの例外として想像できるのは、メンソールに反応する冷感を発生する受容体が刺激を受けて、それが肝臓のあたりの神経に波及した可能性はゼロではないかもしれないと言うことです。しかし、これに医学的根拠はありません。

喫煙は肝臓「にも」悪いものであると言う事実を認識して、まだ吸っている人は一日も早くたばこを捨ててしまうことを強くお勧めします。

節度ある飲酒と禁煙に加えて糖質もほどほどにしましょう

このように、アルコールの中間代謝物であるアセトアルデヒドの、たんぱく質に対する強い変性作用が肝臓を壊してゆくことは明らかですので、厚生労働省が示している節度ある飲酒と言う量は厳に守りましょう。

だいたい、1日当たり日本酒換算で1合までです。詳しくは先に紹介した関連記事をご覧ください。そしてたばこは止めて下さい。

そして、関連する話題として糖分についてのお話を締めくくりに使わせてもらいます。世界保健機関WHOは、世界の国々の政府に向けて「砂糖入り飲料に重税を課すべきである」と呼びかけました。

砂糖入り飲料による肥満と糖尿病が急増しているからと言うのがその理由です。実は砂糖とお酒は似た部分で身体に悪いところがあるのです。

お砂糖はブドウ糖と果糖が結びついてできていますし、清涼飲料水などには果糖ブドウ糖液糖と言った異性化糖で味が付けてあることが多いですね。

ブドウ糖は示性式で書くと CH2OH(CHOH)4CHO になります。先に紹介したアセトアルデヒドは CH3CHO でしたね。良く見ると、右端が同じです。この-CHOがアルデヒド基と呼ばれていることもお話ししました。

このようにアルデヒド基を持つ糖質をアルドースと呼びますが、これが多すぎると血管や神経などのたんぱく質を傷めてしまうと言うことがあるのです。

糖質は栄養素として重要な働きを持ちますが、過剰になるとお酒と同じような原理で身体を壊します。糖質の摂り過ぎにも充分注意しましょうね。

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