TOP > > 免疫力を高めるってどういうこと?人間の体を守る仕組みとその意味

免疫力を高めるってどういうこと?人間の体を守る仕組みとその意味

笑顔の女性

「免疫力」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。食べ物やサプリメントの効果が説明されるときに、必ずと言っていいほど登場する「免疫力を高める!」というフレーズ。

しかし、免疫力が高まる……ことの意味を正確に理解できる人は少ないのではないでしょうか。曖昧に、「病気に強くなるんだな」と思う方が多いでしょう。

今回は、この免疫力について掘り下げて見ましょう。

免疫力は体を守る力!でも免疫力には種類があるって知ってました?

免疫力をイメージで表現すると、「異物から体を守る為の力」です。ですが、体の中に入ってくる異物には、様々な種類があります。バクテリアや菌類、ウイルス、寄生虫、花粉、ホコリ、さらに体内でできる癌も異物に含まれます。

様々な異物に対応する為に、免疫にもいろんな種類の細胞が関わっています。この為、「免疫力」とひとまとまりにして考えるのは無理があるのです。

「免疫力が高まる!だからバクテリアにもウイルスにも寄生虫にも癌にも強くなる!」というのは無理があります。

免疫に関わっている細胞や物質は非常に細かく分けられます。細かいことを言うとキリがないので、大まかな分類を見ていきましょう。

とりあえず、免疫に関わる細胞を羅列してみます。それぞれの話は後でしますので心配しないでください。

【免疫力の分類】

  • 好中球
  • 好塩基球
  • マクロファージ
  • ヘルパーT細胞
  • キラーT細胞
  • B細胞

さて、学校の教科書などには、免疫の分類がいくつかの方法で書かれています。しかし、今回は生物学の話をするわけではないので、少し違う分け方をしてみます。

何に対する免疫なのか、ということから分けてみましょう。「これを高めれば全部OK!」というものは無い、ということがわかるでしょう。

バクテリアや異物、細胞外のウイルスとの戦い

「病気の原因」というと、多くの方がバクテリア(細菌)をあげると思います。口や鼻などの粘膜、傷口などから体の中に入ったバクテリアは、体の中で毒素を作ったり、バクテリアそのものが毒として働いたりして、体に害を与えます。

また、体の中に異物が入ると、毒として働くこともあります。ウイルスは体の中に入ると、人間の細胞に潜り込みその細胞を破壊します。

このように、これらのものが体に入ってきたら、出来るだけ早く取り除かなければいけません。これらは、同じような対処がされますので、バクテリアの例で紹介します。

バクテリアなどが入ってくると、その部位にマクロファージや好中球が集まってきます。そして、入ってきたバクテリアや異物を食べ始めます。食べたバクテリアは細胞の中で分解されます。

その後、マクロファージは食べたバクテリアを解析して、その情報をヘルパーT細胞に伝えます。

ヘルパーT細胞は、その情報をB細胞に伝えて、B細胞に抗体を作るように命令を出します。抗体とは、バクテリアなどをがんじがらめにして動けなくするものです。

B細胞によって作られた抗体の効果で、マクロファージなどが食べ残したバクテリアも無力化できます。

この抗体は、「その種類のバクテリア専用」です。ブドウ球菌専用の抗体、インフルエンザウイルス専用の抗体、など非常に多くの種類があります。

一度、抗体を作ったB細胞は、その抗体の情報を覚えていて、次に同じものが入ってくると、1度目より早く抗体を作り始めるので、同じ病気に2度以上はかかりにくいのです。

細胞の中に入ったウイルスや癌との戦い

ウイルスは、血液の中を漂っている間は、抗体や好中球で除去できます。しかし、細胞の中に潜り込まれると、マクロファージや好中球は手が届きませんし、抗体も細胞の中までは入れません。

こうなると、潜り込まれた細胞ごと破壊するしかありません。癌細胞も同じで、壊す必要があります。

このように、ウイルスや癌に侵された人間自身の細胞を破壊する働きを持っているのが、キラーT細胞や、NK(ナチュラルキラー)細胞です。

これらの細胞は、ウイルスに感染された細胞や、癌細胞を探し出して破壊することで、被害を最小限に留めているのです。

さて、あとは寄生虫と免疫の戦いの説明をするのですが、先にアレルギーについてみてみたいと思います。

アレルギーと免疫は深いつながりがあります。

「免疫力が高まりすぎるとアレルギーが起こる」は間違い?

アレルギーを一言で説明すると、「免疫の暴走で、逆に体を傷つけてしまう現象」です。よく、アレルギーは免疫が間違えて自分の体を攻撃しているから起きる、と言われます。

確かに、自分の体を敵と間違えて攻撃してしまうアレルギーもあります。例えば、B型・C型肝炎や、ペニシリンアレルギー、金属アレルギーなどです。

ただ、アレルギーの代表例とも言える花粉症や、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、アナフィラキシーショックなどは、自身の体を攻撃しているわけではありません。

また、「免疫力が高まりすぎるとアレルギーが起こる」というのも少しおかしいです。アレルギーは、「免疫システムの誤作動」と捉えるのが正しいかと思います。

上にあげた花粉症などのアレルギーはⅠ型アレルギーと呼ばれています。この種のアレルギーについて軽く説明します。

花粉症を例にあげて説明します。図を見てください。

花粉症が起こるメカニズム

花粉を感知した免疫システム(ヘルパーT細胞とB細胞)が、「特殊な抗体(IgE)」を作ることがあります。(抗体のほとんどはIgGというものです。)

このIgEはマスト細胞(脂肪細胞)や好塩基球に結合します。IgEというのは抗体の中でもかなり量が少なく、「アレルギーに関わる抗体」として知られています。そこに花粉が結合するとヒスタミンやセロトニンといったホルモンが分泌されます。

これらのホルモンは、血管を広げる作用や、血液が血管から滲み出やすくなる作用、粘液(鼻水など)の分泌を促進する作用などを引き起こします。

このような効果によって、鼻水が止まらなくなったりするのですね。また、作用が強い場合は、アナフィラキシーショックを起こし、最悪死に至ります。

このように、花粉症などのアレルギーは免疫力の強弱とはあまり関係ありません。

さて、ここで少し違和感を覚えた方もいらっしゃると思います。IgEはバクテリアやウイルスに対する免疫には役に立っていません。

では何故、体はわざわざIgEを作り、アレルゲンを感知してアレルギーを引き起こすようなシステムを組み上げているのでしょうか。

アレルギーは、免疫システムの誤作動だと言いましたが、本来はどんな意義をもつシステムなのでしょうか。

実はここに、寄生虫が関わってきます。

寄生虫との戦い

寄生虫が、腸の中にいる時は、あまり問題は起きません。サナダムシという寄生虫をわざと腸の中に寄生させて、ダイエットに利用している人もいました。(安全だという保証はないので真似はしない方がいいと思います)

しかし、その他の組織や血液の中に寄生虫がいると、色々な問題が起きます。寄生虫が組織を食い破って移動し、脳まで到達することもあります。

では、体は寄生虫に対してどのように対抗しているのでしょうか。寄生虫は大きいので、マクロファージや好中球は寄生虫を食べることができません。

しかし、寄生虫には、バクテリアやウイルスに対して使うような抗体も効きます。なので、抗体で対抗すればいいのですが、寄生虫は組織の奥に潜んでいて、すべての寄生虫に抗体が浸み込まないことがあります。

ここで、IgEが出てきます。IgEに寄生虫の一部が結合すると、アレルギーの時と同じように様々なホルモンが放出されます。

これらのホルモンには、「血液が血管から浸み出しやすくなる作用」があるので、奥に潜んでいる寄生虫にも、抗体を行き渡らせることができます。

このように、IgEの本来の役割は「寄生虫への対抗」なのです。体の免疫システムは、花粉などを寄生虫の一部と間違えているのですね。

ただ、現代の日本では衛生環境が改善したことによって、寄生虫はほとんどいなくなりました。このため、IgEはアレルギーの原因としてだけ、取り上げられて悪者扱いされています。(少しかわいそう)

免疫力が高まるとはどういうこと?実は高めれば高まるほどいいわけじゃない

では、「免疫力が高まった状態」というのはどのような状態を言うのでしょうか。一番に考えられるのは、白血球(マクロファージや好中球)の数が多い、と言うことでしょうか。

白血球が多い状態は、確かに免疫力が高まっているといえるかもしれませんが、必ずしもいい状態とは言えません。

例えば、医者がある方の血液を検査したとします。すると、かなり多い数の白血球が血液にいました。このような場合、医者は「この人は免疫力が高くていい!」とは思いません。

何故なら、白血球の数が多いと言うことは、その人が多くの白血球が必要なほど切羽詰っていることを表すからです。例えば、感染症に感染していると、その病原体を早く除去しようと、白血球の数が増えます。

このように、白血球の数と言うのは、体が必要に応じて臨機応変に変化させるものなのです。なんの病気でもない時に、よりたくさんの白血球を持っていたとしても、無駄なだけです。

同じように、ほかの免疫に関わる細胞や抗体の数も、体がきちんと調整しています。必要以上にあったからといっていいわけではないのです。

仮に、免疫のシステムに割り込んで、「免疫力」を無理やり高める成分があったとしても、それは免疫システムを撹乱していることになり、決して体にいいものではありません。

ですが、免疫力を高めるとうたう食品が体に悪いとは言いません。

長期的なストレスや栄養不足などで、免疫力が異常に下がっていることがあります。例えば、材料が足りなくて、マクロファージを必要な量作ることができない、などといった状況です。

このような状態の人は、免疫力を高める必要があるでしょう。つまり、「免疫力を高める」と言うのは、何かが原因で正常な時よりも下がりすぎた免疫力(白血球の数など)を正常な状態まで引き上げること、と捉えてください。

免疫力は天井知らずに上げればいいものではなく、正常な状態にしておくことが重要、と言うことです。

免疫治療とは?専門家がコントロールする免疫力

免疫治療と言うのをご存知でしょうか。誤解があるといけませんので、免疫治療について軽く触れておきます。

免疫治療というのは、「免疫システムに無理やり介入して、免疫力をあげる」ことによる治療法です。「よくないって言ったじゃん!」という気持ちは分かりますが、この場合は状況が違います。

免疫治療というのは主に癌治療に使われる方法です。癌は重大な病気ですから、それくらいのことも必要でしょう。もちろん、無理やりあげると言っても、専門家がコントロールしているので心配は要りません。

最近注目されているのは、iPS細胞を使った方法でしょうか。iPS細胞というものを使うと、人間の様々な細胞を作ることができます。

つまり、iPS細胞を使ってキラーT細胞やNK細胞を人工的に作って、それを注射すれば、普通の数倍の力で癌細胞を攻撃できるのではないか、という方法です。

まだ、この方法は実用には至っていませんが、実用化されれば癌治療の方法が大きく変わるかもしれませんね。

キャラクター紹介
ページ上部に戻る