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高血圧だとなぜ塩分制限?塩だけ減らして失敗する理由とは

高血圧の予防や治療に塩分制限は欠かせません。健康のため、塩辛いおつまみやお酒を我慢しているお父さんたちも少なくないでしょう。なのに、今一つ血圧が下がらなかったりするのはどうしてでしょうか。

また、健康管理で食塩を制限していても、血圧が上がって困っている人がいたかと思うと、野放図に塩分を摂っているのに平気な人もいます。体質の差と言えばそれまでですが、実は塩分の減らし方を間違っていると効果が薄くなることも多いので、注意が必要なんですよ。

塩分を捨てられるか否か

塩分を摂りすぎると血圧が上がる方向に働くのは間違いないのですが、塩分を摂り過ぎてもさっさと排泄してしまって血圧に影響が出にくい人と、ちょっと摂り過ぎるとすぐに血圧が上がる人とがいます。

この差は人種によるものが大きいようですね。大まかにいうとコーカソイド(白人)は塩分に鈍感で、あまり血圧が上がりませんが、ネグロイド(黒人)はとても敏感で、塩分に反応して血圧が上がります。オーストラロイド(黄色人種)やモンゴロイド(黄色人種)はその中間で、やや塩分によく反応すると言われています。

同じ日本人でも差はある

塩分を摂りすぎると、身体は塩分濃度を一定にするため水を飲むように促します。その水で薄められた塩分は、腎臓でろ過されて排泄されるのですが、一部の塩分は腎臓で再吸収されます。塩分が多くなると、腎臓で分泌される塩分再吸収を促進するホルモンの分泌が抑えられます。

そのホルモンの分泌が減ると、普通は塩分の再吸収を促す信号伝達物質の受容体が不活性化されるのですが、塩分が多くなっても、その受容体が活性化されたままの人がいることが分かってきました。

その原因は肺がんの一種や皮膚がんにも関わりのある、比較的小さなたんぱく質だと分かってきたので、最近ではそのことを利用して高血圧の治療薬を開発しようとする動きもあるようです。

このたんぱく質が、身体の中でどの程度生み出されるのかには個人差があります。そしてそれが塩分を摂っても血圧が上がらない人と高血圧になる人との差の、原因の一つだと考えられているのです。

血圧はなぜ上がる

塩分の主要因である食塩の主成分は、塩化ナトリウムという化学物質です。塩化ナトリウムという名の通り、塩素1分子とナトリウム1分子が結びついた、単純な無機化合物ですね。

このうち高血圧の原因になっているのはナトリウムの方です。ですので、血圧の説明で塩分と書いてあったら、すなわちナトリウムのことであると読み替える習慣を付けましょう。

薄めるには水

ナトリウムは身体の中で様々な信号を伝達するのに大きな役割を持っている、重要なミネラルです。それだけに常に一定の濃度を保つよう、身体は調整機能をフルに動かしています。塩分を摂り過ぎて身体の中のナトリウムが多くなりすぎると、普通は細胞の外側に多く存在するナトリウムが細胞の中にまで入ってきます。

これでは具合が悪いので、普通細胞の中にたくさん存在するカリウムというミネラルを、さらに細胞外から取り込んで細胞内に入ってきたナトリウムと入れ替えて、細胞内を適切な状態にします。すると血管の中のナトリウムはさらに多くなるのですが、この時血管の外から水分が血管の中に入ってきます。

濃度の差による浸透圧という圧力の働きですね。こうしてたくさん入ってきた水分は腎臓でろ過されて、多すぎるナトリウムと一緒におしっこになって捨てられるのです。血管の中にたくさん水分が入ってきて濃度が一定になるのはいいのですが、同じ太さのホースの中に大量の水を流したようなものですから、当然圧力は上がります。

この時腎臓の働きが悪くなって、出口側が狭くなった状態になると、ホースはパンパンになっちゃいますよね。実はこれが高血圧なのです。

加齢

このように、腎臓の働きで余計な水分やナトリウムが排泄されるので、腎臓におけるナトリウムの再吸収が血圧に関係することが分かりましたが、それ以前に年を取ると、だんだん腎臓の働きが弱ってくるという事があります。つまり、誰でも年を取ると血圧が高くなりやすいという事なのです。ですから年齢を重ねるほど塩分を控えなければなりません。

食塩を減らせば良い?

体質によって差はあれど、結局高血圧を防ぐには塩分を減らすべきである、というのは変わらないようです。ではその塩分をよく見てみましょう。塩分はナトリウムのことだと先にもお話ししましたよね。そのことをもう一度確認して下さい。

加工食品などは成分表に食塩換算量が記載されているので、それを参考にしましょう。ナトリウム量だけしか書いてない場合は、食塩換算量(mg)=ナトリウム含有量(mg)×2.54で計算して下さい。

そして塩分制限というと塩辛いものは皆さん警戒するのですが、見落としがちな二つを紹介します。この二つが意外と塩分制限の失敗の原因になっています。

うま味調味料

いわゆる化学調味料ですね。あるいは複合的に加工食品に使われた場合は「アミノ酸等」と表示されることもあります。化学調味料の害については、至極まっとうな研究からオカルトとしか言えないようなものまで、実に様々な意見があるようですね。

しかし、味の素が発売されて一世紀以上、少なくとも重篤な症状をもたらす急性・慢性毒性はないようです。ただし、塩分制限に置いてはかなり要注意物質なのです。アミノ酸系のうま味調味料の主成分は、L-グルタミン酸ナトリウムです。

ナトリウムという言葉が出てきましたね。実は昆布や緑茶、チーズなどのうま味は、グルタミン酸というアミノ酸なのですが、これ自体は名前の通り酸味があるので、調味料として商品化する際にナトリウムと反応させて、ナトリウム塩にしてあるのです。

うま味調味料の代表格である味の素を見てみると、その成分は大半がこのL-グルタミン酸ナトリウムで、2.5%だけアミノ酸ではなく核酸系調味料の5′-リボヌクレオタイドナトリウムが含まれているそうです。

いずれにせよナトリウム塩としての提供ですから、塩分制限の時に意識する必要があります。ナトリウム含有量はおよそ12.2%、食塩換算すると味の素100gで食塩31gくらいに相当します。なんだ、3分の1以下じゃないかとは思わないでくださいね。

特に危険なのはラーメンです。インスタントじゃなくてお店で食べるラーメンには、もともとかなり大量のうま味調味料が使われています。無化調を謳っているお店もありますから、そのお店のラーメンだけは安心でしょうが、サイドメニューやトッピングにも気を付けましょうね。

例えば、出てきたラーメンのスープに小さじ1杯の食塩を加えたら、かなり塩辛くて食べられたものじゃなくなりますが、大さじ1杯の味の素を加えても美味しくなるだけで、ほぼ違和感なく食べられちゃいます。

もちろん後ののどの渇きは尋常じゃないですけどね。美味しいラーメンでそんなに塩辛くなかったのに、後でのどが渇く原因はこの辺りにあるのです。うま味調味料は塩分である、と覚えておいて下さい。

重曹

ベーキングパウダーとしてなど、揚げ物やお菓子などの焼いたものによく使われる重曹ですが、これの正式名称は炭酸水素ナトリウムです。酸味と反応して泡立ち、重曹ではなくなっても、例えばクエン酸ナトリウムなどの形でナトリウム分はしっかり残ります。

ナトリウムの含有量は27.4%。食塩に換算すると、重曹100gは食塩約70gに相当します。うま味調味料と比べるとナトリウム分が多めですが、独特の苦みなどがあるため大量に使うものではないから、うま味調味料ほどの影響はないかもしれません。それでも重曹は塩分である、と覚えておいて下さい。

まわりまわっての塩の害

健康な若い人であれば、多少塩分を摂り過ぎても、先に紹介したようなメカニズムで、塩分はどんどん排泄されてゆきますから、すぐに高血圧という心配は少なめです。しかし、それでも若いうちから塩分を摂りすぎると、やはり良くないことも少なからず存在するのです。

腎臓への負荷

先に紹介したように、塩分を摂りすぎると、腎臓でどんどんろ過されて排泄されてゆきます。しかしどんどんろ過されるという事は、それだけ腎臓に負担がかかっているという事でもあるのです。

若いうちから負荷をかけすぎると、年齢を経て腎臓が弱ってくるころには、塩分をあまり摂らなかった人に比べて、腎臓の傷みが早いとも言えるでしょう。筋肉と違って、多くの臓器は使えば使うほど早く傷みます。たくさん負荷を掛けたら腎臓がマッチョになるなんて話は、決してありません。

カリウムも危険になります

ナトリウムの排泄に重要な役割を持つカリウム。野菜に多く含まれるので、野菜を食べて塩分の害を減らしましょうというのは、若くて健康なら正論です。いえ、年配であっても腎臓に病気さえなければ、野菜はどんどん食べなければいけません。

でも、腎臓が悪くなってくるとカリウムの排泄もできなくなって、血液中のカリウム濃度が上がる高カリウム血症になることがあります。高カリウム血症は突然死の原因にもなる怖い病気ですから、イオン交換樹脂を内服してナトリウムやカルシウムイオンに置き換える治療を行いますが、カリウムの摂取を減らす食事療法も必要になります。

塩味が合うごはん

日本人の食塩摂取量が世界的に見ても非常に多いのは、白いご飯に一番合う味が塩味だからと言われています。確かに塩さえあれば、美味しいおにぎりは成立しますしね。

腎臓が悪くなって塩味を控え、野菜も減らし、なおかつたんぱく質制限という事になると、食べるものは炭水化物、糖質に限定されてきます。そうなると今度は糖尿病が怖いですね。糖尿病も腎臓を悪くする原因の一つです。

高血圧と腎臓

とどのつまり、食事全体からナトリウム塩を減らすことが、高血圧や腎症を防ぐことになるのです。高血圧の話題ですが、ずいぶん腎臓のお話をしました。これは、腎臓病と高血圧は切っても切れない関係だからなんですね。

腎臓の働きが悪いと、ナトリウムや水分の排泄が上手くいかず、高血圧をもたらします。高血圧は腎臓の動脈硬化を引き起こし、腎臓病をもたらすのです。高血圧に起因する腎臓病はゆっくりと、ほぼ無症状で進行しますが、ある程度の年齢になると人工透析が必要になるケースも少なくありません。

慣れが一番

先にお話ししたように、若くて健康なら特に問題がないのですが、それは見た目だけの話です。実は一番怖いのは、離乳食の時期から始まっている「慣れ」の問題なんですよ。若いうちに塩味の濃いものに慣れてしまうと、塩分をそれほど必要としなくなった年齢になっても、濃い味を好みます。

病気になってから塩分制限をするのはつらいですよ。言ってみれば、病気になるほど濃い味付けのものが常態化していた人に、薄味好みの人ですら物足りないような塩味の食事を強要するわけですから。文字通り「味がしない」食事を毎日摂ることになります。

若いうちに薄味に慣れておくと、万が一病気になって塩分制限食を摂る羽目に陥っても、慣れた味に近いから苦痛は少ないでしょう。それに、そもそも薄味のものを食べなれていると、塩分制限が必要な病気になる可能性がぐんと低くなるはずです。

高血圧は慢性病ですが、それが引き起こす様々な合併症は、即死の危険もある怖い病気が少なくありません。また、逆に制限が山のように付いた生活を延々と送る慢性病化することも珍しくないですね。何はともあれ正しい方法でナトリウムを控えるように心がけましょう。

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