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【認知行動療法】自分の考え方の癖を知るストレスマネジメントの方法

ペンとノート

高度に発達した情報社会は、スマートフォンやパソコンなどの普及と相まって、私たちに便利な生活を可能にしてくれています。しかし一方で時間に追われ、情報に左右され、人と比べる機会が増えました。

そんな時代に生きる私たちは、今までにないスピードで変わる環境に振り回されて生きていくことを、程度の差こそあれ、強いられています。

つまり、そのことは誰もが精神的にストレスのある環境にさらされ得るということです。

ストレスは放置しておくと私たちの心身を著しく傷つけます。今回は、誰もが陥りやすい”考え方のクセ”に注目した「認知行動療法」についてお話し、ストレスと上手に付き合う方法をご紹介します。

ストレスには良いものもある?善玉ストレスと悪玉ストレス

私たちが何気なく使っている”ストレス”という言葉。

「あの上司の態度がストレス」とか、「言うことを聞かない子供にストレスを感じる」などと使いますが、ストレスとはもともとはボールなどが外からの圧力により「ゆがんでいる状態」のことを指します。

状態のことを指すということはその状態の”原因”があります。細かいようですが、圧力などのボールなどをゆがませる原因のことを「ストレッサー」と呼びます。

ストレスとは、ストレッサーによって影響を受けている状態のこと。その中で実は良いストレスもあります。就職が決まった、結婚したなどもその例です。これらのいわば「善玉ストレス」も心身に影響を及ぼします。

「善玉ストレス」とは、あまり耳慣れない言葉かもしれません。「適度な」ストレスというとイメージが湧くかもしれません。少し荷が重い課題に取り組んでいるときなどはその良い例です。

「ピンチはチャンス」という言葉もありますが、その課題に取り組んだことで成果があれば技術や評価は上がります。何より自信につながることは嬉しいですよね。

善玉ストレスが導くリラックスした気分は乱れた自律神経を整えもします。しかし焦り、怒り、悲しみなどの「悪玉ストレス」の方が印象に強く残ってしまうので、ストレスというと良くないことだけのイメージがあります。

今回のお話は、マイナスイメージの強い「悪玉ストレス」についてです。この記事では、「ストレス」とは「悪玉ストレス」のことを指していることをご了承ください。

それでは、これからストレスの心と体への影響を具体的に見ていきましょう。

ストレスの身体面への影響は?闘うか逃げるかの選択をする脳

  • アドレナリン
  • ノルアドレナリン
  • コルチゾール

はストレスホルモンと呼ばれ、ストレスを感じた時、適切な対処をするのに必要な物質です。例えば、兵士が戦場で「闘うか、逃げるか」の選択を迫られた時のことを想像してみましょう。

戦場で生きるか死ぬかの選択を迫られた兵士は、瞳孔が開き、心拍数が上がり、震えがこみ上げているはずです。今夜のご飯は何かなとか、どういう経路で逃げようかなどは考えられないでしょう。

この時はひたすら自分を守るために逃げるか、相手を攻撃するかのことだけを選択するために脳が使われています。

例として挙げた兵士は生命に関わる重大なストレスに直面しています。ストレスは脳に直接影響を与えます。脳が全身に指令を出し、生命を守ろうとするのです。

戦場の兵士のような極端な状況でなくても、家庭、職場、学校などで感じるちょっとしたストレスでも以下のような現象が私たちの体に起こっています。

  • 心拍数上昇
  • 血圧上昇
  • 吐き気

などなど

緊張した場面などでドキドキする、胃がムカムカするというようなことは経験があると思います。

ストレッサーが一時的なものであれば症状は治まります。しかし、こういった症状が慢性的なものになるとうつ病などの精神的な疾患にかかりやすくなり、以下のような症状や老化現象が起こります。

  • 高血圧
  • 老化スピード加速
  • 自律神経失調症
  • 免疫機能低下
  • 記憶力低下

これらは、どれも治るのに時間がかかるという点が厄介です。じっくり腰を据えて症状と付き合わなければなりません。

また、ストレスが原因だとは思っていなくても、次のような症状があればそれは疲れている”サイン”と受け取ったほうがいいかもしれません。

  • 肩こり
  • 眼精疲労
  • 腰痛
  • 不眠
  • 注意散漫
  • 肌荒れ

他にも、以前と比べて休んでも以前より熟睡感が得られない、忘れっぽくなった、体がだるいなど、ご自分の状態を普段からチェックするようにして早めに対処する習慣を身につけましょう。

特に自律神経の乱れは、消化器系(胃や腸)の異常としてのむかつきや嘔吐、ひいては胃潰瘍などの疾患、血圧の上昇、心臓病など循環器系の疾患、生活習慣病を引き起こす恐れがあり、注意が必要です。

次に精神面への影響を少し詳しく見てみましょう。

慢性的ストレスは危険…精神疾患にも繋がる

先ほどの兵士の例に戻ります。その後数週間から数カ月以内にわたって、急に当時の光景がフラッシュバックや夢の中で追体験してしまうなどのストレス反応が見られた場合は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されます。

そこまでいかなくとも、日常的に場面でよく経験するストレスの精神面への影響としては次のようなものが挙げられます。

  • 不安障害
  • アルコール依存症
  • うつ病

など

ストレスは身体面、精神面に影響を及ぼし、結果として私たちの”行動”をも変えてしまいます。ストレス解消になるからと、喫煙、飲酒などが過剰になると、高血圧や肝機能障害、アルコール依存症になります。

また、ストレスを避けるために人との接触を避けるようになってしまうと、引きこもりがちになり、思考と行動の悪循環を生み出して「うつ病」になってしまうケースもあります。

ここで、うつ病に絞って、ストレスがうつ病に発展する”負のスパイラル”
について触れ、私たちがはまりやすい「考え方のクセ」を見ていきましょう。

病は気から?陥りやすい「考え方のクセ」とは

ここで少し想像してみましょう。ある時、Aさんが仲の良い友人のBさんに食事のお誘いメールをしました。しかし、1日たってもメールが返ってきません。

ご自身がAさんだったら、ここでどう思うでしょうか。Bさんは忙しいんだな、何かすぐ返事できない理由があるんだろうと思えるでしょうか。

一方で悲観的に考えてしまう場合もありますよね。疲れている時だったり、何かがあって落ち込んでいる場合がそうですね。

もともと悲観的に物事を考えてしまうという人もいます。例えばこんな感じでしょうか。

Aさんが感じる…

  1. (やはり)嫌われているに違いない
  2. 怒っているのかな?
  3. (返事をよこさないなんて)ひどい人だ

など

このように、悲観的になってしまうとなかなかその考えから抜け出せません。そして何より厄介なのは、そのネガティブな考えを引きずってしまうことです。

嫌な気分は何回も思い出され、いつしか事実以外に想像したことなども定着してしまい、あれもこれも嫌なものになっていきます。

ネガティブな考えは、ストレスに直結します。

ストレスは、外に向いた怒り=攻撃でもあります。そして同時に自分の身体を同時に攻撃しているということに気づく人は少ないようです。

いつまでも相手を疑ったり、怒ったり、それが原因で相手との関係を悪くしてしまったりすれば、自己嫌悪に陥ったりもします。

私たちが生きていく以上は他人と関係を持たねばなりません。ですからそう言ったストレッサーをゼロにすることは不可能です。

しかし工夫次第でコントロールして嫌な気分を軽くしたり、上手く対処できるように訓練する方法があります。

それが次にご紹介する「認知行動療法」です。

罪を憎んで人を憎まず!認知行動療法とは

「認知行動療法」とは、もともと認知療法と行動療法という独立した2つの手法が合体したものです。

「認知」が変われば「行動」が変わる、「行動」が変われば「認知」も変わるという、いわばコインの裏表の関係にあるために一緒になりました。

有効性は高く、うつ病に対しては薬物療法並み、不安症に関しては薬物療法より優れていることが分かり、イギリスやアメリカではまず第一に選択される治療法となっています。

うつ病、不安症、不眠症、過食症、依存症、子どもの心の病気などに効力を発揮します。

認知にフォーカスして行動を変える!

認知行動療法の「認知」とは、「自然に浮かんでくる考え方や物事の捉え方」のことです。

私たちは出来事をそれぞれの心のフィルターを通して解釈しています。この心のフィルターが歪んでいたりすると、受け取りかたも偏ったものになってしまいます。

認知とは、このフィルターと同じものだとここでは理解しておいてください。

認知行動療法では、この認知が偏ってしまい、行動などに問題が起きてくる状態です。この偏りを「ゆがみ」と呼んでいます。

私たちは同じ出来事に関して皆それぞれが違う考え方や受け取り方をします。ストレス(ストレッサー)に対しても千差万別の反応を示します。

それは

  • 性格
  • 体質
  • 生まれ育った背景や習慣

などに左右されるからです。

しかし、思い悩んでしまう人、マイナスな思考に陥りがちな人は幾つかの極端な物事の受け止め方をしているようです。

陥りがちな「10の思考パターン」

デビット・D・バーンズ博士は「10の思考パターン」として以下のようにまとめました。

  1. 「全か無か」思考
  2. 「一般化のしすぎ」思考
  3. 「心のフィルター」思考
  4. 「マイナス化」思考
  5. 「結論の飛躍」思考
  6. 「拡大解釈と過小評価」思考
  7. 「感情的決めつけ」思考
  8. 「すべき」思考
  9. 「レッテル貼り」思考
  10. 「自己関連づけ」思考

いかがでしょうか。何か原因があって落ち込むような場面で、このような偏った思考にしがみつきがちではありませんか?

これらの思考をしてしまうあなたが悪い、性格が悪いと言っているわけではありません。責めているわけではなく、客観的にこういった傾向がありますという意味でご紹介しました。

冷静でいられなくなったとき、参考にしていただきたいリストです。

次に、このような思考パターンをどのように修正していくか、1の「全か無か」思考を例にとって見ていきましょう。

0から1の間を意識して…全か無か思考対処法

身体に怪我をした時と違い、メンタル面でのダメージは簡単に目に見えません。外傷ではないですから目に見える絆創膏などもありませんし、辛い時、他の人になかなか言葉で伝えられない時などは非常に困りますよね。

表現できない辛さや思いを客観的に数値化してみるという方法があります。医療機関で行われる心理テスト、うつ病診断のためのチェックシートなどはこうして客観的に判断し対策を取るためのツールです。

応用、というわけではないですが、「全か無か思考」に陥りやすい人は、それを0か1か、あるいは0か100かに置き換えてみて、その中間に存在しているいろいろな数字に思いを巡らせてみると良いでしょう。

例えば、0と100の間には、6、14、20、50…などの数字がありますね。今はどれくらい落ち込んでいたかなと手帳などに点数を記録しておき。昨日はどれくらいだったかなと見返すことができればしめたものです。

自分でできる認知行動療法

本格的な認知行動療法は、心療内科や精神科などの専門機関で受けることができますが、自分で考え方の「クセ」にアプローチして症状を改善することもできます。

このように、自分で自分を助けることを「セルフヘルプ」といいます。セルフヘルプは、心理テストなどと違い、受身ではなく、積極的に自分に働きかけます。腰を据えてじっくり自己の内面を観察します。

これは、普段意識していない事柄への取り組みで、一見大変そうですが、筆記用具と時間があればできます。

効果を確かめながらじっくり実践することが必要です。やってみたものの、気分が悪くなったり、満足のいく効果が期待できないようであれば中止し、自己診断はやめて専門家に相談してください。

具体的にセルフヘルプの方法をご紹介する前に、認知の前段階について触れます。

根拠なく浮かんでくる「自動思考」

認知と感情を区別する必要があると先述しましたが、そのためには認知を掘り下げていく必要があります。その過程で、普段意識しない以外な考えに気づくことがあります。

例えば、Cさんは会社の上司から評価されたいと日頃から思っていたとします。ある日、上司からある仕事を依頼され引き受けました。しかし、やったことのない仕事だからと一瞬尻込みしてしまいました。

この、一瞬の尻込みがCさんを苦しめます。「自分はその仕事ができないかもしれない」、「期待に応えることができないかもしれない」という思いがありました。そしてそれらは「自信喪失」という認知につながります。

自信喪失の状態になると気分が落ち込んできます。「ミスをしたら怒られるかもしれない」、「評価が下がるのでは」、「クビになるのでは」などという考えが頭をめぐり「不安」になるからです。

この不安こそがCさんの「本音」なのです。この「本音」、「心の声」を認知行動療法では「自動思考」と呼びます。

Cさんは上司に評価されたいはずなのに、不安を抱いて尻込みしてしまいました。依頼されただけであってまだ仕事にも着手していないし、当然その仕事についてまだ誰も評価していないのに…

自動思考は、現実を誤ってとらえる見方につながります。Cさんの場合、根拠のない自信喪失をますます確信していってしまうということになります。

自信喪失の状態のまま期待に応えようと一生懸命仕事をする状況はかなりのストレスです。Cさん自身が気づくか、周囲が気付いて早く対処しないとうつ病にかかってしまうリスクが高く危険です。

セルフヘルプの方法とその際のポイント

認知には、浅い層、中くらいの層、深い層と3段階あると考えられています。自動思考は浅い層にあるので意識しやすく、したがって変えやすいのです。

ここで、認知行動療法を自分でする場合のポイントを押さえておきます。

  • 週に1回、感情・考えを書き出して整理する
  • 書き出したことをノートにまとめる
  • ゆったりした環境でくつろいで行う

できればメモを頻繁にとり、記録しておきます。どんな状況でどのように感じたか、考えたかが後で分かるようにします。日記をつけるとなおいいです。

記憶しているようで、毎日の出来事は次々に忘れられていくものだからです。何より覚えておかないといけないと常に思っていることはストレスになります。

このことは、考えや感情を言語化して目に見えるように、あるいは耳で聞こえるようにできるという利点があります。

ストレスはなかなか目に見えないものですが、言語化すると少なくとも自分で読めたり、聞いたりできます。心の中のモヤモヤを体の外に出してみるというとスッキリして聞こえるかもしれません。

次にセルフヘルプの手順をご紹介します。以下のように行いますが、先ほどの言語化が出発点です。

  1. 感情をとらえる(言語化、点数化する)
  2. 自分をほめる
  3. 考え方(認知)をとらえる
  4. 別の考え方がないか探す
  5. 考えが変わったことを記録するためのノートを作る

2の「自分をほめる」ということについて少し説明します。1で感情(喜怒哀楽)を言語化、点数化していくと、気分が落ち込むことがあります。否定的な感情すら抱くこともあります。

ですので、次は自分を肯定してあげましょう。自分をほめる、自分に「OK」と言ってあげることは自己肯定感につながります。

自己肯定感とは、自分の事を素晴らしい、大切だと自分で思うことです。そのために、一度ご自分の長所を紙に書き出してみるといいでしょう。

紙に書き出すことがお勧めです。パソコンのキーボードやスマートフォンでももちろんいいのですが、ペンを持って書くという行為は他の方法よりも身体に訴えます。まずは試してみてください。

気分がふさぎ込みがちだったり、仕事などが行き詰まった時は、家の周りを散歩してみると、気分転換になります。同じように、頭の中でぐるぐると何か考えて市しまっている時は、どこか身体を動かしましょう。

セルフヘルプとしてご自分でこれらの作業をしている時、頭の中を掃除するようにペンを走らせてみると大分気分が変わってくることを実感できるでしょう。ぜひお試しください。

ものを書く際は、何もキチンとした文章でなくとも良いのです。単語でかまいません。そもそも誰かに見せるという前提ではないので、思い浮かんだことを素直に書きつけることをおすすめします。

良薬は口に苦し…ストレスは人生のスパイス?

「罪を憎んで人を憎まず」という言葉がありますね。犯した罪は確かに良くない。罰せられるべきだが、事情があったはずだから、その人(格)とは切り離して考えるべきだという意味です。

デビット・D・バーンズ博士の、私たちが陥りやすい考え方の癖を思い出してください。その癖は確かに悪い影響を考えかたや感情に及ぼしますが、私たちの
「性格」はそれぞれあっていいものです。

今回お話しした認知行動療法は「自動思考」や「認知」に働きかけるものです。決して「人格」を否定するものではありません。

ストレスという物理用語を心理学の分野に応用した生理学者、ハンス・セリエは、”ストレスは人生のスパイスである。”という言葉を残しました。

例えば、何かにチャレンジする時の恐怖や不安などのストレスは、成し遂げた後に達成感や充実感をもたらします。全くストレスのない平板な人生では変化がなくつまらないかもしれませんね。

「自分が耐えうるストレス」というと許容範囲を狭めてしまうかもしれませんが、ある程度のストレスを自覚する事と自分なりの対処方法を早く見つけ出す事はこの時代に生きていく上で必要不可欠なのではないでしょうか。

冒頭で述べましたが、ストレスは私たちの人生、生活から切り離せないものです。認知行動療法のような方法は、それらから背を向けるものではありません。

むしろ、正面から向き合い、積極的に関わっていく態度です。勝ち負けの問題ではないですが、何事に関しても背を向けた途端、ストレスを感じやすくなるものです。

私たちの一生は、身体と心に大きく左右されます。ところが、身体は目に見えるのでそちらにばかり気をとらわれて、心のケアは後回しにされがちです。傷や病気などの身体的なトラブルと同様に、心の声にも耳を傾ける必要があります。

認知行動療法というと硬いイメージを持たれるかもしれませんが、まずは自分の心の傾向、何か問題に直面した時に陥りやすい考え方のクセを思い出すきっかけになれば幸いです。

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