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喫煙と肺がんは関係ないらしい?喫煙にメリットはあるのか

たばこを吸う男性の肺

「煙草は百害あって一利なし」と言われ、禁煙が推奨されています。日本では健康増進法などにより公共の施設や職場での禁煙・分煙が義務付けられているので、喫煙者は肩身の狭い思いをするようになりました。

喫煙の健康被害について熟知している人が多いかと思いますが、中には喫煙を肯定する声も聞こえてきます。そこで本当に喫煙は百害あって一利なしなのか?という問題を提起し、喫煙の害に関する真実をまとめてみました。

禁煙派VS喫煙派!互いが主張する喫煙のメリットとデメリットは?

かつて煙草はリラックス効果の高い薬草として珍重され、煙を吸引したり葉タバコを噛んだりする習慣が世界中に広まっていきました。

しかし、1900年に入ると科学者が喫煙と肺がんの関連を指摘するようになり、喫煙が健康に与える悪影響についての研究が急速に進められました。

現在では、世界医師会や国際薬学連合など多くの国際組織が喫煙を抑制する活動を推進しています。1988年からは「世界禁煙デー」が設けられ、2003年にはWHOの総会で「たばこ規制枠組条約」が採択されました。

以降、煙草の健康被害を認識したり周囲の禁煙ブームに影響された喫煙者が、次々と禁煙していくようになりました。

一方、煙草をこよなく愛する人達からは、「煙草にはメリットがある」「禁煙ブームが行き過ぎている」と禁煙ブームに対する不満の声も上がっています。

喫煙のデメリット

喫煙には非常に多くのデメリットが挙げられています。その代表的なものがこちらです。

  • 煙草の煙には約4,000種類の化学物質が含まれ、全ての器官に悪影響を与える
  • 煙草に含まれるニコチンに強い毒性と依存性がある
  • 喫煙すると肺・循環器疾患の発症率や死亡率が上昇することが指摘されている
  • 喫煙者で自殺のリスクが高くなるとの報告がある
  • 煙草を吸わない人も受動喫煙による健康被害を受けてしまう
  • 赤ちゃんや子どもが受動喫煙すると大きな健康被害を受ける
  • 煙草を吸わない周りの人に精神的なストレスを与える
  • 妊婦の喫煙で胎児の成長に起きな悪影響を及ぼす
  • 子どもやペットによる煙草の誤食でニコチン中毒事故が起こりやすくなる
  • 煙草のヤニが口臭や歯の頑固な黄ばみを起こす
  • 味覚が鈍り、食事がおいしく感じられなくなる

喫煙のメリット

喫煙を肯定する意見を集めました。喫煙のデメリットに比べると数は少ないものの、中には説得力のある主張も見受けられます。

  • ニコチンには、神経伝達物質に作用して充足感を高める効能がある
  • 喫煙には社交を楽しんだりビジネスを潤滑にする効果がある
  • 煙草はマヤ文明の時代から続く人類にとって大切な嗜好品だ
  • 喫煙を我慢するとストレスが溜まり、かえって体に良くない
  • ヘビースモーカーで長生きした人も多い
  • 強迫性障害やADHDの認知障害を改善したという報告がある
  • 喫煙者には潰瘍性大腸炎が少ない
  • ニコチンにパーキンソン病を予防する効果がある
  • 禁煙者が増えているのに、肺がんの死亡者数が増えているのはなぜか?
煙草にも色々な効能があるのです。

うーん、百害あって一利なしというのは大げさなのでしょうか?次に、喫煙のメリットについて考察していきますよ。

薬理作用がある?がんには関係ない?煙草の効用ウソ・ホント

喫煙のメリットと言われている煙草の作用について、順に説明していきます。

ニコチンの精神薬理作用

さまざまな研究から、ストレスが強い時ほど喫煙の欲求が高まりやすく、喫煙すると充足感が得られたり作業効率が高まったりすることが分かっています。

煙草に含まれるニコチンには、脳内神経伝達物質の

  • ドーパミン
  • ノルアドレナリン
  • アドレナリン
  • βエンドルフィン

の放出を調節する作用があります。それぞれの物質は

物質 作用
ドーパミン 学習能力
ノルアドレナリン 覚醒作用
アドレナリン 抗ストレス作用
βエンドルフィン 鎮痛効果・多幸感

といった作用に関与しており、喫煙すると覚醒効果とリラックス効果を同時に得ることができるのです。

中でもニコチンはβエンドルフィンのはたらきに大きく関与しており、ニコチンを摂取するとすぐにリラックスすることができます。

栗原久氏・田所作太郎氏らの「喫煙の精神薬理作用-実験動物による研究」の結果からは、ヒトがニコチンを摂取すると抗不安作用を得ることが推測されています。

ただし、東北大学・熊野宏昭氏の「喫煙と自己脳波フィードバック光駆動装置の相乗効果の検討」では、心身共にストレスの少ない状態で喫煙しなければ、ニコチンの精神薬理作用は得られにくいという結論が発表されています。

煙草のコミュニケーション効果

今では嗜好品として広く親しまれている煙草ですが、かつては宗教的な儀式や民族同士の争いを避けるためのコミュニケーションツールとして用いられていました。

マヤ遺跡からは煙草を吸う神の像も発見されており、煙草が古代から近代までいかに多くの人に愛され続けてきたかが分かります。

最近は、「タバコミュニケーション」という新語も出てきているように、喫煙者同士の交流で得られるさまざまなメリットも注目されてきています。

煙草を吸うとリラックスするため、喫煙所では喫煙者同士が打ち解けやすく、情報交換や仕事の打ち合わせがスムーズにできるという喫煙者の声も多いのです。「職場から喫煙所がなくなってしまうと仕事の業績も悪化してしまう」という悲鳴も聞こえます。

お酒も大人のコミュニケーションツールです。しかし酔って思考能力や理性が低下しやすいのがネック。私も飲み過ぎには注意しなければ…。

対して煙草は、喫煙しない時よりも意識が覚醒しているので、スムーズにコミュニケーションが取れるのが良いところなんですね。

しかしタバコミュニケーションの対象は喫煙者に限られ、非喫煙者からは逆に敬遠されやすいというデメリットもあります。

煙草に期待される薬効

また煙草は、特定の病気に対する薬効も注目されています。

認知症

以前、煙草のニコチンがアルツハイマー型認知症患者の日常生活動作を向上させるという報告がありました。しかし研究してみると、製剤としての実用性は期待できなかったようです。

むしろ、ニコチンにはアルツハイマー型認知症・脳血管型認知症のリスクを高めるおそれがあります。

ニコチンを摂取すると血流が阻害され、脳機能が低下しやすくなります。また動脈硬化から脳梗塞を起こして脳血管型認知症に進んでしまう場合もあるのです。

九州大学の住民調査により、喫煙者は非喫煙者よりも認知症のリスクが2倍高いことも発表されています。

強迫性障害・ADHD

アメリカのNCBI(国立生物工学情報センター)のデータベースで、ニコチンに強迫性障害の改善に効果がみられたという報告を見つけることができます。
NCBI「強迫性障害のニコチン治療」(英文サイト)

英文なのですが、内容は「強迫性障害の患者5人にニコチンガムを8週間与えたところ、4人に効果がみられた」といった報告になっています。

また、ニコチンの神経伝達物質の放出を調節する作用が、注意欠陥多動性障害(ADHD)に良い影響を与えるとして、臨床試験も進められているようです。

ただしニコチンは毒性も併せ持つため、毒性を減らす研究が行なわれている段階です。いずれニコチン由来の安全な新薬が誕生すると良いですね。

強迫性障害やADHDを治療中の人は、喫煙すると薬の効き目が弱くなったり症状が悪化する可能性もあります。

また、研究用のニコチンと煙草に含まれるニコチンの作用は違います。煙草に火をつけるとニコチンは発がん性のある「ニトロソアミン」に変化し、有害性が増します。間違っても、煙草を吸うことでニコチンの薬効を得ようとは思わないでください。

パーキンソン病

パーキンソン病は、50代以降に増える難病の一種です。ドーパミンの放出に異常のあることから発症すると考えられており、震えや歩行障害などの症状を伴います。

パーキンソン病患者の中でも喫煙者の死亡率が低いことから、ニコチンがパーキンソン病に良い作用をもたらしていると考えられ、研究が始まりました。

喫煙によって改善される症状と悪化する症状のあることが分かっています。パーキンソン病のメカニズムと治療法は、研究中の段階です。副作用のないニコチン由来の新薬が登場するのを待ちたいところです。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は20~30代に増えている大腸に炎症が起こる病気です。下痢・腹痛・発熱などの症状を繰り返します。

喫煙は潰瘍性大腸炎を予防したり症状を改善することが分かっています。しかし、喫煙はさまざまな健康被害のリスクが大きいため、潰瘍性大腸炎対策に喫煙することは薦められていません。

喫煙を我慢するとストレスが溜まる

イライラした時に喫煙するとリラックスできるのは、先に説明したニコチンの効用によるものです。

しかし、煙草を吸わずにいると無性にイライラして煙草が吸いたくてたまらなり、煙草を吸うとイライラがおさまる場合は、ニコチン依存症になっていることが考えられます。

依存とは、使うのをやめると体(または心)が強く渇望するため、やめたくてもやめることのできない状態のことです。

ニコチンは麻薬やアルコールより依存性が強く、数回喫煙するだけでとニコチンに依存してしまいます。また喫煙者の7割はニコチン依存症だといわれ、自分の意志だけで禁煙することが難しい人も少なくありません。

確かに禁煙することで強いストレスが生じれば、かえってストレスが体の毒になってしまうかもしれません。

しかし、煙草を我慢することで生じるイライラや不安こそニコチン特有の離脱症状なので、禁煙してニコチン依存症から抜け出せば、イライラや不安は起こらなくなります。

喫煙したほうが長生きできる?

飲酒や喫煙はさまざまな病気のリスクを高めますが、あまりにもストイックに摂生するのはかえって体に良くないとも言われます。好きなように酒や煙草を楽しんで元気に長生きする人もいます。

しかし、多目的コホート研究(JPHC研究)が、たばこと死亡率との関係について調査研究したところ、喫煙歴のある人は喫煙歴のない人に比べ、男性で1.6倍 女性で1.9倍高く、喫煙量が多い人ほど死亡率の高いことが分かっています。

喫煙して病気にかかり寿命を縮めてしまう人もいれば、元気に長生きできる人もいます。このような差が出てくるのは、病気が一つの原因で起こるものではなく、遺伝子、生活習慣、環境などが複雑にかかわりあって条件が揃った時に起こるものだからです。

条件によってはヘビースモーカーでも長生きできる人もいるかもしれませんが、喫煙に死亡率を高めるリスクがあるのも事実なのです。

禁煙者が増えても肺がんの死亡者数が一向に減らない理由

男性の場合、喫煙者は非喫煙に比べ、肺がんの死亡率が4..5倍高くなっていることが分かっています。

ところが、日本の喫煙率は1966年をピークに年々減少しているにもかかわらず、肺がんの死亡者数は年々増加し続け、今ではがん死因のトップに躍り出ています。

また肺がんの死亡者数は1958年には約2,900人しかいなかったのが、2015年には約77,000人にまで増加しています。

このデータを見て「禁煙しても肺がんは減らない」「喫煙と肺がんは関係ない」と誤解する人が出ているようです。

喫煙者が減少しているのに肺がんの死亡者数が増加している理由は2つあります。

  • がんは高齢者に多いため、高齢者の増加で単純にがん死亡者数が増えた
  • がんの発症には約30年かかり、過去の喫煙者数が現在の死亡者数に反映している

がんはすぐに発症するものではなく、喫煙を初めて数十年後に発症します。肺がんの死亡者数が増加しているのは、若い時に喫煙歴があり肺がんにかかった高齢者の人口が多いためです。

肺がんが増えているように見えますが、実際に肺がんは禁煙によって減少しています。

人口の高齢化を考慮して「肺がん年齢調整死亡率」を割り出すと、肺がんの死亡者数は1966年を境に減少し続けていることも分かっているのです。禁煙効果が死亡者数に反映するには、長いスパンが必要かもしれません。

確かにがんが発症するメカニズムは複雑なので、原因は喫煙だけではないかもしれません。

しかし喫煙はがんのリスクを高め、禁煙で肺がんが予防できることは嘘ではないといえるのです。

デメリットの方が多い煙草…それでも喫煙を続けますか?

喫煙者と受動喫煙

煙草にはメリットもあり、「百害あって一利なし」とまではいかないけれど、やはりデメリットの方が強く、禁煙したほうが得することが再認識できたのではないでしょうか。

健康面以外にも「煙草代がもったいない」「部屋がヤニで黄ばむ」「火災の原因になる」などなど、多くのデメリットもありますね。

余談ですが、消防庁の調べによると2014年の火事の原因は

  1. 放火
  2. 煙草
  3. コンロ

…となっています。煙草による火事もけっこう多いんですね。

それでも喫煙を続けますか?自分の意志で禁煙するのが難しい人は、禁煙外来などの専門科に気軽に相談してください。

禁煙中にタバコが吸いたくなったら、「喫煙のデメリット」「禁煙できた時のメリット」を言い聞かせ、ニコチンが体から抜けるまで頑張りましょう。
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