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バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の症状・原因・治療法

バセドウ病は、甲状腺機能の問題が原因で起こる自己免疫疾患です。「バセドウ病」という病名や「甲状腺」という人体の何かに関係がありそうな用語は聞いたことがあると思います。ただ、それがいったい何のことなのかさっぱりわからないという人のほうが多いのではないでしょうか。

ましてや、「自己免疫疾患」ともなると、なんのこっちゃと首をかしげてしまう人も多いと思います。今回は、バセドウ病に関していろいろお話していく予定ですが、まずは「甲状腺」だとか「自己免疫疾患」などといった用語について予備知識を得ておいたほうが後々わかりやすいと思います。

いきなり専門的なお話になるのも気が重くなるかもしれませんので、まずはバセドウ病の「バセドウ」という印象的なことばについて、つまりは病名の由来についてお話しておくことにしましょう。バセドウ病という病名は、

1840年にこの病気を研究発表したドイツの医師カール・フォン・バセドウにちなんで名づけられました。ドイツ医学の流れをくむ日本ではバセドウ病と呼ばれていますが、ドイツ語圏以外の国では、もうひとりの研究者であるイギリス人医師の名前にちなんで、グレーブス病と呼ばれています。

ということで、やはり人名を病名に採用するという、比較的よく見られるパターンがバセドウ病の由来となっていることがおわかりいただけたかとます。それでは、ここからはバセドウ病という病気についてお話を移すことにしましょう。

【記事中 写真画像 あり】※苦手な方はご注意ください。

バセドウ病ってどんな病気?

バセドウ病というと、その症状や治療方法を知らない人からすると、どことなく重い病気であるように感じられるかもしれませんね。しかも甲状腺の病気ともなると、ますますその印象が強まりそうですが、実際には、早く病気を発見してしっかりと治療することで、多くは改善できる病気です。

バセドウ病を定義づけるとするならば、「甲状腺の機能が亢進(こうしん)し、過剰に甲状腺ホルモンを作る病気(伊藤病院)」となります。「甲状腺機能の亢進」というのは、通常よりも甲状腺が活発に機能しすぎてしまうというイメージになります。

バセドウ病を発症すると、身体(特に顔)のいろいろなところに異変が現れますが、たとえば目の異常が起こるケースは多いです。以下の写真は「バセドウ眼症病甲状腺症」と呼ばれる病気の症状です。

▼クリックで大きい画像を表示します

バセドウ病の眼症状症例写真

上記の症状は、眼のまわりの筋肉や脂肪が腫れあがって、眼球が前に押し出されてしまった患者さんの様子です。もちろん急にここまでの症状になることはありませんが、いくつかのプロセスを経て、悪化したバセドウ病によりこのような症状に至ることもあるのです。

それもこれも、すべては「甲状腺機能の亢進」が影響しているわけで、甲状腺機能を正常化させることで、たいてい症状がおさまるのがバセドウ病の特徴です。それでは、まずはその甲状腺についての予備知識を共有しておくことにしましょう。

甲状腺にはどんな働きがあって、どこにあるの?

男性には「のどぼとけ」が目にみえやすいので、甲状腺の位置的な説明がしやすいのですが、実は女性にも「のどぼとけ」はあります。いずれにしても、甲状腺と呼ばれる器官は、私たちの「のどぼとけ」のすぐ下のあたりに位置しています。以下はその模式図になります。

甲状腺の位置と名称

甲状腺の働きは多様ですが、間接的に作用する部位が多様なだけで、主な働きという意味では「甲状腺ホルモンの分泌」とひと言で説明できます。甲状腺ホルモンの働きは「身体の代謝の調整」とこちらもひと言で説明されることになりますが、深くお話すると膨大なスペースを要します。

ですからこちらもあえて簡単に説明をしますと、甲状腺ホルモンの働きは主に以下の4つになります。

  • 脳の働きを活性化する
  • 体温調節を行う
  • 心臓や胃腸の働きを活性化する
  • 新陳代謝を促進する

上記に少し説明を加えた図を以下に示しておきますので、ご覧いただくとより具体的にイメージできると思います。

甲状腺ホルモンの働き

甲状腺ホルモンに異常をきたす病気は複数考えられますが、そのひとつがバセドウ病なのです。

自己免疫疾患ってどんな疾患?

もしかしたらはじめて聞くという人もいるかもしれませんが、「自己免疫疾患」と呼ばれる種類の疾患があります。「免疫」ということばはおそらく聞いたことがあるでしょう。その意味も、近年メディアでも盛んに取り上げられているワードなのでなんとなくイメージできると思います。

免疫を簡単に説明するなら、「外部から体内に侵入してきた異物(細菌やウイルスなど)に対し攻撃してさらなる侵入を阻む機能」と説明されます。いわゆるアレルギーと似ていますが、アレルギーは、上記の免疫機能があまりにも過剰に反応してしまうケースを指します。

ところが自己免疫疾患は異なります。自己免疫疾患は、自分の体内でつくられた(もしくはもともとあった)正常な細胞を攻撃して殺してしまうという、かなり厄介な疾患なのです。そしてバセドウ病も、実は自己免疫疾患の代表的な疾患の1つなのです。

少し難しい話になってしまったかもしれませんね。下の図でイメージしていただけると、多少わかりやすいと思います。

免疫反応と自己免疫反応の働き

自己免疫疾患は、バセドウ病のほかに、関節リウマチなどに代表される膠原(こうげん)病などをはじめとする難病が多いです。

バセドウ病の現在の傾向、そして原因や症状について

バセドウ病にも、他の病気と同じように、ある傾向が伴います。バセドウ病は甲状腺の病気ですが、甲状腺の病気は女性に多い病気として知られます。甲状腺疾患患者の男女比率は1:9とも言われるほどですから、男性にくらべると圧倒的に女性のほうがかかりやすい疾患といえます。

バセドウ病に限ってみると、男女比率は1:4になります。これでも男性にくらべると4倍のリスクが女性に降りかかるわけですが、いろいろな病気がある甲状腺疾患の中では、バセドウ病は男性が発症する可能性が高い病気であるともいえるのです。

年齢的には、働き盛りの年代の人全般に現れる病気であるといえます。バセドウ病は20代、30代の発症率が過半数を占めます。30代といえば最も働き盛りの年代です。次いで40代、50代と続きますので、バセドウ病は働く人々にとっては非常に厄介な病気なのです。

バセドウ病は何が原因でかかるの?

バセドウ病は、現在日本全国で500万人の患者がいると言われる病気です。しかし残念ながら、バセドウ病を発症する厳密なメカニズムが未だわかっていないのです。すでにお話していますが、バセドウ病は「自己免疫疾患」のひとつで、自分の体内だけで起こっている病気です。

自分の身体を攻撃する抗体が体内でつくられることがバセドウ病の直接の原因であることはわかっていますが、わかっているのはそこまでです。なぜそういった抗体がつくられてしまうのかというところは未解決のままです。現状は原因究明の糸口もありません。

そのためバセドウ病は難病であると言われます。ただし、他の自己免疫疾患や膠原病の多くが指定されている特定疾患には現在のところ指定されていません。バセドウ病は、明確な原因と根治の方法がない難病ではあっても、改善することは十分可能な病気ではあります。

そのためにも、バセドウ病が疑われる症状を自覚したら、早目に医療機関で検査をすることが望まれます。では、「バセドウ病が疑われる症状」とは、いったいどのような症状なのでしょうか?これについて、次のところで見ていくことにしましょう。

もしかしたらバセドウ病!?こんな症状には要注意!

バセドウ病は、大きく分けると以下の3つの症状が現れることが多いです。

  • 甲状腺ホルモンの過剰
  • 甲状腺腫
  • 眼球突出

ただし、いずれの症状もどういった自覚症状を伴うのかがわかりづらく、また、眼球突出(冒頭の写真の症状)に関しては、かなり症状が進行してから気づくことも多いです。そこで、バセドウ病で見られる症状と、それぞれで起こりうる自覚症状について、以下の表にまとめます。

バセドウ病で見られる症状 起こりうる自覚症状
甲状腺ホルモンの過剰 動悸・息切れ、指先・手足や体のふるえ、暑がりになる・汗をたくさんかく、食欲はあるのに太らない・むしろやせる、皮膚がかゆくなる、肝機能の低下、その他倦怠感や不快感などさまざまな体調不良
甲状腺腫(甲状腺の腫れ) のどの痛み、のど周辺の不快感・圧迫感、首の前面が全体的にふくらむ・首が太くなったように見える
眼球突出 上のまぶたが腫れる、上のまぶたが上方に引っ張られる(そのため目が大きくなったように感じる)、眼球が前方に出てきているように感じる(この症状はむしろ少数)、視界がぼやける、視力低下

甲状腺腫がどのような症状なのか少しわかりづらいと思いますので、甲状腺が腫れる様子を説明した図と、実際の患者さんの参考写真を掲載しておきます。

正常な甲状腺とびまん性甲状腺種

バセドウ病びまん性甲状腺腫症例写真

また、眼球突出を説明した図も以下に掲載しておきます。以下の図では、バセドウ病によって眼窩筋(がんかきん)、眼窩脂肪と呼ばれる部位に炎症が起こって腫れあがり、結果的に眼球が前に押し出されている様子を示しています。

眼球突出の図と各目の機能の名称

バセドウ病はどうやったら治るの?

バセドウ病治療は、基本的には病院で実施することが望ましい病気です。何しろ原因がわかっておらず、根治の方法もわかっていない現状の難病のたぐいに入る病気です。うっかりした判断(特に放かのう置など)はどんなことがあっても回避しなければならず、やはり病院で治療すべきです。

ただし、難病とはいっても、一般的な難治性疾患とは異なり、バセドウ病は治療によって改善できるケースが多いです。バセドウ病は、投薬治療に一定の効果があることが実証されていますので、その意味では、投薬治療が確立している病気であるといえるでしょう。

それでは、病院で実施するバセドウ病の投薬治療について、まずはお話します。

バセドウ病の投薬治療にはどんな薬を使用するの?

バセドウ病は、自己免疫作用によって甲状腺機能が亢進し(過剰になり)、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで起こるさまざまな疾患の総称です。根治することはできませんが、対症療法(バセドウ病によって発症する症状に対処するための治療)として、投薬治療が有効です。

バセドウ病の投薬治療では、「抗甲状腺薬」と呼ばれる種類の薬を投与して行います。抗甲状腺薬とは、甲状腺ホルモンの分泌を抑制する効果がある薬です。抗甲状腺薬には主に2種類あります。「メルカゾール」、「チウラジール(プロパジール)」と呼ばれる薬です。

症状によってこれらの薬を使い分けることになりますが、長くても服用から3か月ほどで甲状腺ホルモンの分泌が正常化します。ただし、薬を飲んでいればよいというものではなく、その間甲状腺ホルモンの分泌量を測定しながら効果を確認する必要があります。

他には、あまり好まれないイメージもありますが、「アイソトープ」と呼ばれる薬の服用も考えられます。なぜあまり好まれないのかというと、実はこのアイソトープという薬は、「放射性ヨウ素」と呼ばれる薬だからです。もちろん人体に悪影響が及ぶレベルの放射線量ではありません。

とはいえ、ただでさえ放射線の影響が懸念される甲状腺疾患のバセドウ病ですから、やはり「放射性ヨウ素」というワードに敏感に反応してしまう患者さんは多いです。ですからどうしても、アイソトープにはあまり良いイメージを抱かない患者さんが多くなってしまうのです。

甲状腺ホルモンの分泌量が安定してきたら、徐々に薬の量を減らし、最終的には寛解(完治ではないが、一時的に正常に戻る)の状態に至ります。薬の量が多くならなないためには、できるだけ早い段階で投薬治療を行うことが望ましいです。

というのも、まあどんな薬でもそうですが、抗甲状腺薬にもいろいろと副作用のリスクがあるからです。それでは、次のところでは抗甲状腺薬の副作用につて、しっかりと理解を深めていただきたいと思います。

抗甲状腺薬にはどんな副作用があるの?

メルカゾール、チウラジール(プロパジール)に代表される抗甲状腺薬を服用すると、用法用量を守っていたとしても、何らかの副作用に見舞われることがあります。その副作用は、大きく分けると、以下の4タイプの症状です。

  • かゆみ、皮疹などの皮膚トラブル
  • 肝機能の異常
  • 無顆粒球症
  • その他の副作用(基本的にはまれなケース)

特に注意しなければならないのが、肝機能の異常と無顆粒球症です。肝機能異常は、そもそも甲状腺ホルモンの過剰分泌によって起こりやすい異常です。つまり、肝機能障害はバセドウ病によく見られる症状の一種なのです。

しかし、抗甲状腺薬の服用によって甲状腺ホルモンの分泌亢進がおさまっても、肝機能の数値が改善しない、もしくはむしろ悪化する場合があります。このケースは抗甲状腺薬の副作用の可能性が大きくなります。ただ、もともと肝機能の数値が高かった人はそのたぐいではありません。

また、無顆粒球症は、白血球の成分の一部に異常が表れ、免疫機能が低下する症状です。この副作用の頻度や発症の確率としては、そう多くありません。ただ、起こるとまずい種類の副作用なので、万一に備えて、薬を飲むだけではなく、通院が必要になります。

アイソトープの副作用としては、1%程度のリスクではありますが、目の疾患が悪化するという報告があります。とはいえ、意外にもアイソトープによる副作用は他の抗甲状腺薬の副作用にくらべると軽微であるという報告もあります。

バセドウ病の自宅での対処は?予防法はある?

一般的に難病と呼ばれる疾患は、場合によっては病院に入院してそれ以上症状を悪化させないための対症療法に専念しなければならないケースが多いです。しかし、同じ難病でもバセドウ病の場合、意外にも自分でできる対処方法もあります。しかも予防も可能であるとされるのです。

とはいえ、対処に関しては、やはり病院で治療しながら、さらにできるだけの対処を自分で(自宅で)行うというスタンスにとどめる必要があります。特定疾患ではないとはいえ、難病であることに変わりないバセドウ病ですから、病院での治療が大前提としてあるべきです。

バセドウ病の対処、自力でできることは何?

自分でなんとかするとはいっても、医学の知識もなければ対処のための道具も持たない一般人に大きなことができるわけではありません。ただ、精神衛生の管理をすることが、バセドウ病の対処としては非常に重要であり、しかもこればかりはお医者さんにもできないケアであるといえます。

上表の「甲状腺ホルモンの過剰」の項目の「起こりうる自覚症状」のところで、考えうるいろいろな自覚症状を挙げましたが、最後に「倦怠感、不快感などの体調不良」を挙げました。実は、この部分が「精神衛生の管理」の重要性と呼応する症状なのです。

誰でも倦怠感や不快感は覚えたことがあると思いますが、実は、バセドウ病が原因で自覚する倦怠感や不快感は、口で言ったり文字で起こしたりする以上に大きい倦怠であり、不快であるケースが多いのです。

そのため、精神衛生の管理を意識しないと、激しい精神不安に陥らなければならないリスクも考えられるのです。特にご家族がいる場合には、自宅でのふだんどおりの生活を維持するためにも、できるだけ精神衛生のケアを自分で行ったり、家族の協力を得るたりする努力が必要になります。

具体的には、テレビや物音など、あまり大きな音を出さないこと、睡眠時間をしっかりととり、規則正しい生活を送ることなどが挙げられます。自分でできたとしても、家族の協力を得ることがなかなか難しいところだと思いますので、場合によっては、ご家族でお医者さんのアドバイスを受けることも考えたほうがよいでしょう。

バセドウ病の予防法

バセドウ病が難病の一種に数えられる理由は、その厳密な発症原因がわからないこと、そして完治の方法がないことが挙げられます。ということは、医学的(生物学的)な視野でバセドウ病を予防するのは難しいと言わなければなりません。しかし、予防ができないわけではありません。

上でも触れましたが、バセドウ病はとにかく精神的な落ち込み、情緒不安定など、メンタルに訴えかけることが多い病気です。ですから、ふだんから明るく、前向きな気持ちで生活を送ることが、バセドウ病の予防という意味では非常に重要であるといえます。

厳密には、バセドウ病の発症を未然に防ぐというよりは、万一バセドウ病を発症したときのこころの持っていき方の方向性として、ふだんから「前向きで明るい気持ち」を持つことが望ましいといえるのかもしれません。

とはいえ、気持ちというのは性格によるところも大きいと思いますし、性格と関係する以上、だれもが明るい気持ちでいられるわけではありません。とすると、やはり健康診断や血液検査などを定期的に行い、甲状腺の数値に注意する意識が重要になってくるといえるでしょう。

検査をしたからといって、バセドウ病の予防ができるわけではありませんが、早期のバセドウ病の発見によって、症状を悪化させないという意味でのリスク回避は十分可能です。全身のいろいろな器官や臓器とのかかわりが深いバセドウ病だからこそ、定期的な検査の有無がものを言うのです。

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改善への意欲と目標をもってバセドウ病と向き合おう!

原因の究明や治療などといった医学的な立場でも、また病気やメカニズムを理解するという患者側の立場でも、バセドウ病は何かと難しい部分が多い病気です。それゆえ難病といわれて久しいわけですが、再三お話しているように、バセドウ病は改善が十分可能な病気です。

それだけに、万一バセドウ病にかかってしまったら、やはり改善への意欲と目標をもって治療に励み、病気と向き合っていただきたいという思いが強いです。ともすれば精神的な落ち込みが大きくなりやすい疾患ですから、少しでも前向きな気持ちになれるよう、病気と向き合っていただきたいものです。

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