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食中毒予防!ノロ、ロタのウイルス性と細菌性それぞれ原因ごとに対処

調理をする男女

「急に蒸し暑くなってきたけれど子どもに持たせたお弁当大丈夫かしら」、「消費期限を過ぎた卵を生で食べさせちゃったけどダンナは元気かしら」、そんな風に食べ物に関して心配になったことはありませんか。

2011年 腸管出血性大腸菌O111、2012年 O157、2013年ノロウイルス、2014年O157と毎年のようにニュースになる集団食中毒事件。多くの方が医療機関に掛り、中には不幸にも亡くなってしまわれる方もいます。

食中毒は飲食店や学校、病院など大量に食事が用意される施設だけで起こるものではありません。ご家庭でも発生し得るのです。

「あなたの作った食事で家族が食中毒」こんな悪夢のような事態を招かないためにも、食中毒の予防と対処法をご紹介します。

食中毒ってなに?原因物質と季節の違い

テレビやラジオのニュースでたびたび耳にする食中毒。そもそも食中毒とは何なのでしょうか。さらに突き詰めると中毒って何なのでしょうか。

中毒の意味には「毒にあたる(中る)」という意味と、薬物などに依存してしまう状態を指す場合の二つの意味があります。食中毒の場合の中毒は、前者の「毒にあたる」という意味で使われています。

中毒
毒物が許容量を超えて体内に入ることで体が正常な機能を果たさなくなる状態。
食中毒
食べ物や飲み物を介して有害な物質が体内に入ることによって起こる嘔吐や下痢、発熱などの健康被害のこと。

食品衛生法 第58条 第1項では食中毒患者を「食品、添加物、器具若しくは容器包装に起因して中毒した患者」と定義しています。

食物アレルギーは食中毒ではありません。

食中毒は夏場に多い?

高温多湿になる日本の夏は食べ物が傷みやすく食中毒も多く発生するイメージがあるかと思います。確かに細菌性の食中毒は夏場に多く発生する傾向があります。ただ、ウイルス性の食中毒は冬場に多く発生します。

もちろん春や秋でも食中毒は発生します。食中毒は年間を通して発生しますので1年中注意が必要なのです。

ただ季節により食中毒の原因物質は異なる傾向があることが統計的に明らかにされています。

食中毒の原因物質は多くがウイルス

食中毒の原因物質を考える前に、病原体微生物についてお話をさせていただきます。病原体微生物とは目に見えないくらい小さい病原体のことです。プリオン、ウイルス、クラミジア、リケッチア、細菌、真菌、寄生虫の順に大きくなっていきます。

病原体微生物の中で食中毒の原因として報告の多い物質は、ウイルス、細菌、寄生虫です。

食中毒の原因の約7割はウイルス、約3割が細菌なのです。その他の原因としては寄生虫、自然毒、化学物質があります。

食中毒の原因の大半を占めるウイルスと細菌について感染予防のポイントを中心にご紹介致します。

食中毒の原因の約7割を占めるウイルスとは

ウイルスとはタンパク質の殻の中に核酸(DNAかRNA)が入ったとっても小さな存在です。ウイルスには細胞はありません。

ウイルスの大きさは平均で0.1㎛。0.1㎛は1ミリメートルの1万分の1です。ヒトの目で確認できるのは0.1mmくらいまでと言われていますから、ウイルスは肉眼ではとても見ることは出来ません。電子顕微鏡でやっと見ることの出来る存在です。

ウイルスは殻の中に遺伝情報が入っただけの存在であり、自分だけでは生きていくことができません。自分だけで増殖することもできません。他の生き物の細胞に寄生して、そして増殖します。

先程ウイルスは病原体微生物の1つとご紹介いたしました。ウイルスは遺伝子を持っていて増殖することができるという生き物の特徴を持っています。でも細胞がないので生き物ではないと分類されている不思議な存在です。

食中毒の原因となるウイルスは?

食中毒と診断したお医者さんは保健所に届けることが法律で定められています(食品衛生法58条1項、食品衛生法施行規則72条)。このため厚生労働省は食中毒に関する統計的な情報を持っていて、その情報をホームページ上で私たちに公開しています。

ウイルスには沢山の種類がありますが、食中毒の原因となるウイルスは何だったでしょうか。厚労省が発表している「平成27年 病因物質別月別食中毒発生状況」を見てみましょう。

平成27年病因物質別月別食中毒発生状況
(平成27年 病因物質別月別食中毒発生状況 – 厚生労働省より)

この年の食中毒の患者数は22,718人でした。食中毒になってもお医者さんに掛らなかった人はこの統計に反映されませんので実際にはもっと多くの人が食中毒に掛っていると考えられています。統計のデータからは原因物質などの傾向をみることが出来ます。

平成27年の食中毒患者22,718人中、15,127人の方がウイルスが原因で食中毒に掛っていました。全体の66.6%がウイルスが原因の食中毒でした。

ウイルスの種類別に原因を探ってみますと、15,127人中14876人の方がノロウイルスが原因で食中毒に掛っていました。なんとウイルスを原因とする食中毒の98.3%がノロウイルスが原因であり、食中毒全体で考えても原因の65.5%がノロウイルスでした。

ノロウイルスの対策を万全に行えば食中毒を3分の1に減らすことが出来る計算になります。

ノロウイルス以外のウイルスにはどのようなものがあったのでしょうか。この年の統計では251人の方がノロウイルス以外のウイルスが原因で食中毒に掛っています。ただ厚労省のデータでは「その他のウイルス」と分類されており詳細は不明です。

一般的に食中毒を考える場合ノロウイルス以外のウイルスとしてはロタウイルスが重要です。感染者数は少ないのですが激しい下痢を引き起こすからです。

そこでウイルス性食中毒の中でもノロウイルスとロタウイルスに焦点を絞ってご紹介したいと思います。

ノロウイルス:急性胃腸炎の原因に!感染時の対処法

ノロウイルスは急性胃腸炎の原因となるウイルスです。

ノロウイルス感染により起こる急性胃腸炎の症状

  • 急激な吐き気
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 腹痛

などの胃腸症状が主な原因です。37~38度の発熱を伴うことも多くあります。

ノロウイルスの潜伏期間は24時~48時間です。食べ物を介してノロウイルスに感染した場合は前の日か前々日に食べたものが原因と考えられます。

ノロウイルスに感染しても発症しないケースや風邪の様な症状のみで嘔吐や下痢に至らない場合もあります。ただ発症した場合はとても辛い症状を経験することになります。

ノロウイルスに感染して1日~2日の潜伏期間を経て発症した場合、急にこみ上げるような激しい吐き気を感じて食べた物をもどしてしまう場合が多く見られます。1日に何度も嘔吐する場合もあります。

嘔吐の前に微熱が出たり胃に違和感を感じることもあります。水のような便が出る下痢が起こることが多くあります。

ノロウイルスに感染したら?治療法や対処法

ノロウイルスの直径は約30から40nm(ナノメートル)、1nmは1mmの10万分の1の長さです。ノロウイルスはウイルスの中でも小さなウイルスです。

ウイルスについて研究するには実験的にそのウイルスを増殖させる必要があります。でもノロウイルスに関してはまだ実験的に増殖させる方法が見つかっていません。このためノロウイルスに関する検査や治療の研究が他のウイルスと比べてとても遅れています。

ノロウイルス感染症に有効な抗ウイルス薬はまだありません。薬がないため医療機関を受診した場合、水分と栄養の補給を目的とした対処療法が行われます。

通常の健康な方がノロウイルスに感染した場合は、発症中はとても辛い思いをしますが1日~2日で症状はおさまります。後遺症が残ることもありません。

医療機関までの移動時間、受診までの待ち時間に嘔吐や下痢を我慢しなければならないことを考えると自宅で安静にしているということも選択肢として考えて良いと思います。

免疫力の充分ではないお年寄りや乳幼児の場合は重篤化する場合もあります。吐いたものをのどに詰まらせて窒息してしまったり、誤嚥性肺炎を起こして死亡に至った例も報告されています。

そのような方の場合は、医療機関を受診して対処方法を指導していただいたほうが安心です。乳幼児は小児科、お年寄りの方は内科を受診して下さい。

ノロウイルスの感染が多い時期

ノロウイルスの感染は年間を通じて報告されています。ただその中でも冬場に多く感染が報告されています。一般的にノロウイルス感染の約7割が11月~2月に起こるとされています。

厚生労働省発表の「平成27年 病因物質別月別食中毒発生状況」によるとこの年の1年間で14,876名の方がノロウイルス患者として報告がされています。

平成27年のノロウイルス感染症患者の月別の患者数とその月の患者数の年間患者数に占める割合は以下の通りです。

1月 3787人 25.5%
2月 2524人 17.0%
3月 3792人 25.5%
4月 790人 5.3%
5月 333人 2.2%
6月 345人 2.3%
7月 178人 1.2%
8月 472人 3.2%
9月 45人 0.3%
10月 349人 2.3%
11月 1057人 7.1%
12月 1204人 8.1%

この年の11月から2月に報告されたノロウイルス感染症患者の年間患者数に占める割合は57.7%でやはり例年通りこの時期に多くのノロウイルス感染が認められています。ただし3月にも3,792名(25.5%)方でノロウイルス感染が報告されています。

上記の様に年間を通じてノロウイルスの感染は報告されていますがやはり桁違いに冬場に多くその感染が報告がされています。冬季に感染が多いのはノロウイルスの特徴です。

寒い時期の嘔吐、下痢症はノロウイルス感染を疑ってみるのが良いのではないでしょうか。

ノロウイルスが原因の嘔吐・下痢症の症状がでたら?注意すべき点

まず嘔吐・下痢症で注意をしなくてはならないのは脱水です。ただしノロウイルスによる嘔吐・下痢症の場合は嘔吐がおさまった後に水分補給できるようになる場合がほとんどですので過剰に脱水を心配する必要はありません。

ノロウイルスに有効な抗ウイルス薬はまだありません。ノロウイルスをやっつける薬がなのですから、体に有害なノロウイルスは体の外に出してしまうことが大切です。嘔吐、下痢は体が頑張ってノロウイルスを体の外に出してくれている反応なのです。

もどしたり(嘔吐)、下痢が続くのはとっても辛いことです。でも、だからと言って吐き気止めや下痢止めを医師の指示なく個人の判断で安易に飲むのはやめましょう。悪者ウイルス・ノロが体の外に出て行かなくなってしまいます。

吐き気止めを飲んでしまうと、有害ウイルスが体内にとどまるだけではなく、吐きたいのに吐けない、という状態となり、よけいに辛くなります。

ノロウイルス感染症で1日で10回くらい嘔吐することは珍しいことではありません。嘔吐が続いている時に大切なことは何も飲まない、何も食べないこと(絶飲食)です。

嘔吐が続いているときは自分の胃液すらも腸は受け付けられない状態です。この時に水分を摂っても吐いてしまうだけなのです。

嘔吐が続いている時に注意することは絶飲食の他に窒息を防ぐことです。吐いたものをのどに詰まらせて窒息を起こすと最悪の場合死に至ることもあり得ます。

また、吐いたものを誤って飲み込んで気管支や肺に入れてしまった場合、誤嚥性肺炎を起こす可能性もあります。

仰向けに寝ないようにしましょう。患者さんが小さなお子さんの場合は寝るときは横にいて様子を伺い仰向けの状態で吐かないように注意をしてあげてください。

ノロウイルスが原因の嘔吐が止まったら、とにかく水分補給!

ノロウイルスの嘔吐が止まったら水分補給を開始しましょう。嘔吐が止まったと、どうやって判断すればよいのでしょうか。ノロウイルスの嘔吐は6時間程度でおさまると言われています。

吐き始めてから6時間程度が経過し、最後の嘔吐から「しばらく時間」が経っても戻さないようでしたら嘔吐がおさまったと一旦判断してみましょう。

この「しばらくの時間」に関しては「1~2時間」とおっしゃる先生もいれば「2~3時間」とおっしゃっている先生もいます。もちろん個人差もありますし、その時の状態にもよります。

上記の「6時間程度」、「1~2時間」、「2~3時間」に関しては目安としてお考えください。

嘔吐がおさまったなあと判断したら水分補給をしましょう。水分補給に理想的なものは経口補水液です。電解質と糖質がバランスよく含まれた経口補水液が市販されています。

ノロウイルスでの脱水は軽症であることが多いので「飲めるものを飲む」で大丈夫です。麦茶などがよいです。体温程度に温めて飲むと刺激が少なくて良いです。牛乳や炭酸飲料はさけてください。

水分を補給する際は「少しずつ、こまめに」行うと良いです。この時の量や時間的間隔に厳格な基準はありません。

まずは小さじ1杯(5ml)ではじめて様子をみてください。水分補給がきっかけとなってまた吐いてしまった場合は嘔吐がおさまっていなかったと判断してまたしばらく様子を見てください。

水分補給をしても嘔吐してしまったり吐き気を催すこともなさそうでしたら次の水分補給をして下さい。その時の間隔としては10分は空けてください。でも30分以上も間をあける必要はありません。

ここで嘔吐や吐き気がなさそうでしたら少しずつ水分量を増やしてください。この時も増量の厳格な基準はありません。様子を見ながら小さじ1杯を2杯、2杯を3杯、慌てず焦らず根気よく少しずつ水分量を増やしていきましょう。

小さじで合計12杯、合計60ml飲めたら後は水分を普通に飲んで大丈夫です。飲みすぎるとまた吐き気が来ることがありますので油断はしないようにしましょう。

脱水で注意が必要なのは下痢が始まってからです。ノロウイルス感染症の場合は半日ほどで嘔吐がおさまるので口から水分補給が出来るようになります。ですのでそれほど脱水を心配する必要はありません。

ただ下痢が長引く場合は水分補給する飲料の種類に注意が必要となります。嘔吐・下痢症の脱水は水分だけでなく大量の塩分も排出されています。さらに下痢が長引く場合はカリウムも不足してきます。

失われた水分、塩分、カリウムをバランスよく補給するには経口補水液が適しているのです。

ノロウイルスが原因の嘔吐が止まったら、食事再開のタイミング

嘔吐・下痢症で嘔吐が続いている間は絶飲食ですので食べ物は食べません。ではどのタイミングで再開すれば良いのでしょうか。これに関しても厳密な基準はありません。

食事再開のタイミングは嘔吐がおさまってから、となります。ただ、嘔吐がおさまったらまず水分補給を優先しますので、食事の再開はその後となります。最初の嘔吐から12時間以上経過してから食事を再開するのがよいです。

ノロウイルスが原因の嘔吐が止まったら、食事は何を食べれば良いか

ノロウイルスによる嘔吐・下痢症で食事を再開する場合、何をどう食べたらよいでしょうか。まず避けたほうがよい食事について考えてみたいと思います。

避けたい食事は、脂っこいもの、発酵しやすいもの、柑橘系のくだもの、の3種類です。

脂っこい食事の例 てんぷら
ラーメン
揚げ物
ポテトフライ
ピザ
豚の角煮
焼肉
ドーナッツ
チョコレート
ケーキ
ナッツ類
うな重
カレーライス など
発酵しやすい食事の例 豆類
果物

サツマイモ
かぼちゃ
砂糖を沢山つかった食べ物 など
柑橘系の果物の例 レモン
オレンジ
みかん
デコポン
イヨカン
ハッサク
マーマレード
グレープフルーツ
はるか
ベルガモット など
おすすめの食事

  • おかゆ
  • 葛湯
  • すりおろしりんご
  • うどん
  • そうめん など

一度にたくさん食べないで分けて食べるようにしましょう。普通の食事に戻すには数日かけましょう。

見た目で元気に戻るのと胃腸が元気になるのは時間差があり、胃腸が元に戻る方が時間が掛ります。

見た感じが元気でも直ぐに普通の食事に戻すとおなかが痛くなったり、また吐き気をもよおしてしまいますので注意が必要ですね。

ラクトフェリンがウイルス性食中毒の救世主かも!?

母乳にはタンパク質、乳糖、脂肪のほか、ビタミン類、ミネラル、塩分、ホルモン、水分、酵素と赤ちゃんが母乳だけで生きていけるように、パーフェクトな栄養を備えています。

なかでも、出産後、1週間位、母体から出るどろっとしたクリーム状の乳を初乳といいますが、初乳には多くの優れた成分が含まれています。

初乳には分泌型免疫グロブリンという免疫抗体が含まれ、これが赤ちゃんの口から胃腸の粘膜に広がると、様々な細菌やウイルスの侵入を防いでくれるのです。初乳を飲んだ赤ちゃんが病気に罹りにくい理由がここにあります。

その初乳のなかに多く含まれるたんぱく質の一種ラクトフェリンという成分があります。鉄を含むピンク色のタンパク質で、大腸菌に対して強い抗菌力があることが明らかにされています。

このラクトフェリン成分が、ノロウィルスやロタウィルスなどのウイルス性食中毒の感染予防に効果があるという研究が進められていて注目を集めています。

ある保育園児にラクトフェリンを含む食品を16週間食べてもらい、その結果食べてない園児は45人中7人がノロウイルスを発症したのに対し、食べた園児の発症率は46人中2人と大きく下回ったという臨床試験結果が報告されています。(2007年報告)

また、別の保育園児にもラクトフェリンを含む食品を12週間食べてもらい、ロタウイルスの感染した園児の嘔吐、下痢の回数が大きく下回ったというデータも報告されています。(2009年報告)

これらは、ラクトフェリンがウイルスや消化管細胞と結合し、消化管細胞にウイルスが感染するのを抑制すると考えられています。

つまりラクトフェリンを摂ることによって、ウイルス性食中毒を予防し、万一感染しても症状が軽症化し、早く治癒することが期待されるのです。

ラクトフェリンを含む食品はヨーグルトやサプリメントとして販売されているので、食中毒が流行する6月から7月、またノロウイルスやロタウイルスが流行する12月~3月にかけて、試してみるのはいかがでしょうか。

ノロウイルスの感染を防ぐには?ノロウイルス感染予防法

ノロウイルスに掛っても大事にいたることはまずありません。でも回復までの間、嘔吐、下痢、腹痛、発熱と辛い症状が続きます。

有効な治療薬がないため、掛ってからの対処方法を考えるよりも掛らない方法を意識したいものです。

まずご家庭での感染経路について考えてみたいと思います。次の2つの可能性が考えられます。

  • 食材、調理器具などに触る部位(手など)にノロウイルスが付着していた場合
  • ノロウイルスの付着した二枚貝を充分に加熱しない場合

上記のような場合、食べ物や食器などを通じて口からノロウイルスが体の中に入ってしまいます。

なぜ食材、調理器具などに触る部位(手など)にノロウイルスが付着するのか

人の手から人の手を介して人の口にノロウイルスが入ってしまうことが考えられます。

ノロウイルス感染症の下痢がおさまったあとでも糞便中へのノロウイルスの排泄は続きます。その期間は通常1週間くらいですが、長い場合は1カ月くらいの時もあります。

ノロウイルスに感染しても体が丈夫なために発症しなかった人、あるいは発症しても軽い風邪程度ですんだ人からも便を介してノロウイルスは排泄されます。

つまりうんちの中にノロウイルスが含まれているのです。

排便後にトイレットペーパーでお尻を拭きます。ウイルスはとっても小さな存在です。トイレットペーパーを8枚重ねて使っても下痢をしている場合は瞬時に、健康なうんちの場合でも3秒で手は汚染されてしまいます。

お尻を拭いた手にノロウイルスがついてしまった人がいるとします。その人がトイレの後に手を洗わなかったらノロウイルスは手についたままです。

その人がノロウイルスの着いた手で色々なところを触ったらどうなるでしょうか。トイレのドアノブ、エスカレーターの手すり、エレベーターのボタン、電車のつり革。見ず知らずの色々な人が触る場所は沢山あります。

ドアノブなどからノロウイルスが検出されることは実際にあります。そしてノロウイルスの感染力は数週間つづきます。気温4度で約8週間、20度では4週間以上感染力を失いません。

さらにノロウイルスは微量でも感染すると言われています。10~100個くらいのノロウイルスが体内に入っただけでも、感染して発症すると考えられています。

ノロウイルスに感染した人が知らずにあちこちにノロウイルスをペタペタつけてしまっても、ノロウイルスは小さすぎて見ることが出来ません。

現在、公共機関など人の手の触れる場所で「抗菌」の文字をご覧になる機会もあるかと思います。この抗菌機能は細菌に対しては効果が期待できますが、残念ながらウイルスに対して効果はっきりしていません。

ノロウイルスが着いている所を別の人が知らずに触ってしまった場合、手などの触った場所にノロウイルスがついてしまいます。

ノロウイルスが手についたまま、手を洗わずにお料理をしたらどうなってしまうでしょうか。

その人がおにぎりを握ったら、その人がお箸の先を触ったら、それを食べた人の口を通って体の中にノロウイルスは入っていってしまうのです。

ノロウイルスのつく二枚貝を充分に加熱しない場合

二枚貝にノロウイルスがついていることがあると言われています。この場合の二枚貝とは具体的にはどの貝のことでしょうか。

ノロウイルスに感染している可能性のある二枚貝の代表と言えば牡蠣です。

牡蠣以外の二枚貝の例としては

  • 赤貝
  • シジミ
  • アサリ
  • ハマグリ
  • ホタテ

があります。これらの二枚貝もノロウイルスに汚染されている可能性はあります。

二枚貝はなぜノロウイルスに汚染されるのか

二枚貝はなぜノロウイルスに汚染されてしまうのでしょうか。それは二枚貝が大量の海水を飲み込むからです。

ノロウイルスに感染した人の便や嘔吐物がトイレから下水を通って下水処理場に捨てられます。下水処理場でウイルスを除去しきれなけれない場合、ノロウイルスが河川や海水に入っていってしまいます。

ノロウイルスを含んだ海水を二枚貝が飲み込むと二枚貝の内臓の中にノロウイルスが蓄積されてしまうのです。

二枚貝以外の貝はノロウイルスに汚染されないの?

牡蠣、アサリ、ハマグリ、ホタテなどの二枚貝は海中のプランクトンを餌にしています。プランクトンを食べるために二枚貝は大量の海水を飲み込みます。その際に海水と一緒にノロウイルスを飲み込んでしまう確率が高くなってしまうのです。

巻貝(サザエなど)や一枚貝(アワビなど)は海藻を餌にしています。二枚貝のようにプランクトンをとるために海水を大量に飲むことがないため巻貝や一枚貝はノロウイルスに汚染されることがあまりありません。

二枚貝の中で牡蠣がノロウイルスに汚染されている印象が強いのはなぜ?

ノロウイルスは加熱すると活性を失います。シジミ、アサリ、ハマグリは一般的に加熱してから食べられるのであまり問題にならないのです。

ハマグリは刺身で食べることもありますが、その場合は内臓が取り除かれて食されます。ノロウイルスは二枚貝の内臓に蓄積しますので内臓を取り除いてしまえば問題になりません。

ホタテも生で食べられますが、やはりホタテも内蔵の部分は取り除かれて貝柱の部分だけ刺身として食べられるので問題にならないのです。

牡蠣は生でも食べますし、内臓ごと食べるので活性を有したままのノロウイルスが体内に入ってしまい問題になります。

ノロウイルス感染の予防は口に入れるものにウイルスがつかないようにすること

  • ノロウイルスが付着した手で料理をするから体内にノロウイルスが侵入してしまう
  • ノロウイルスが蓄積した二枚貝の内臓を生で食べるから体内にノロウイルスが侵入する

こうして原因を知れば、予防法も覚えるのが楽になるのではないでしょうか。

まずノロウイルスがお料理など口に入れるものにつかないようにするための方法です。これは手を洗うことです。

手を洗うタイミングは、おトイレに行った後とお料理をするときです。

まず流水で15秒以上手を洗うことが大切です。流水で手についたノロウイルスを洗い落とすイメージをしながら手洗いをして下さい。実際に流水でノロウイルスは流れ落ちます。

次に石鹸で洗うことが大切です。ただ普通の石鹸でも薬用石鹸でもノロウイルスを殺す(失活化)ことは出来ません。

石鹸で手を洗うのは手の脂を落とすためです。手の脂が取れるとウイルスが流水で流れ落ちやすくなります。

洗えてないところがないようにまんべんなく洗いましょう。

薬用石鹸で1日に何回も洗っているとノロウイルス対策としては逆効果になることがあります。薬用石鹸には抗菌、殺菌作用のある成分が入っています。この成分のため洗いすぎると皮膚常在菌まで殺してしまうことがあるからです。

皮膚常在菌は私たちの皮膚を守ってくれている細菌です。皮膚を守ってくれる細菌が死んでしまうとノロウイルスが皮膚につきやすくなってしまいます。

皮膚常在菌が死んで皮膚からはがれ落ちてしまうと角質層にできた隙間にノロウイルスがつきやすくなってしまいます。

ノロウイルス対策としては普通の石鹸で充分です。でも病原体微生物はウイルスだけではないので、他のバイキンが気になる方は薬用石鹸をお使いなるのはもちろん宜しいかと思います。その場合は洗いすぎないようにご注意ください。

ノロウイルス対策にアルコール消毒は有用?

アルコール消毒は一般的にウイルスの力価を下げる、つまりウイルスを失活化します。ノロウイルスはアルコール抵抗性が強いのですが、アルコール消毒(エタノール)はノロウイルスにも効果はあります。

ただし、ノロウイルスにはアルコールは効果がないとする情報も多々あります。厚生労働省が作成する「ノロウイルスに関するQ&A」にもかつては「ノロウイルスの失活化に消毒用エタノールはあまり効果がない」という主旨の記載がありました。

現在の厚労省「ノロウイルスに関するQ&A」には「エタノールがノロウイルスの失活化に効果があまり効果がない」という記載は削除されて書きかえられています。

なぜ、かつてはアルコール消毒がノロウイルスに効果がないとされていたのでしょうか。それは前述のようにノロウイルスを研究用に増殖させる技術がないからです。

ノロウイルス自体を実験対象としてアルコール消毒の効果を確かめることが出来ないのです。そのためノロウイルスによく似たウイルスを対象にして研究した結果、効果なしとされたことがありました。

その後、別のノロウイルスによく似た、より人間のノロウイルスに近いとされるウイルスを対象にアルコール消毒をした結果、効果があることが分かりました。そのような報告が続いて、最近はノロウイルスに対するアルコール消毒の評価が変わってきています。

ノロウイルスを除去するには流水と石鹸による手洗いが一番です。でもその後にアルコール消毒をすると手洗いの効果をより一層高めることが出来ます。

また、流水と石鹸はいつでも使えるものではありません。外出時に他の人が触った場所に触れた場合はアルコール消毒をすることは有用です。

二枚貝を食べてもノロウイルスに感染しない方法は「加熱調理」

国際連合の下部組織に国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)があります。このFAOとWHOが、食品に関する国際基準を作る国際機関を設立しました。コーデックス委員会と言います。

そのコーデックス委員会が2012年に定めた「食品中のウイルスの制御のための食品衛生一般原則の適用に関するガイドライン CAC/GL79-2012」というものがあります。

そのガイドラインにより、二枚貝のウイルスを失活させる加熱調理方法が示されています。

その方法とは、二枚貝の中心部を85~90℃まで加熱してから少なくとも90秒間の加熱することです。

このCAC/GL79-2012ガイドラインの二枚貝加熱調理方法は厚生労働省のノロウイルスに関するQ&Aにも「参考」として紹介されています。

しかし、ノロウイルスに関する研究は発展途上であり上記の加熱調理方法でも「絶対にノロウイルスには感染しない」とは言い切れません。

厚生労働省が作成公開しているパンフレット「冬は特に注意!ノロウイルスによる食中毒
」には感染経路として「ウイルスの蓄積した、加熱不十分な二枚貝など」との記載がありますが、「では加熱十分とはどのような状態か」の説明はありません。

「二枚貝を食べてもノロウイルスに感染しない」絶対確実な方法はありませんが、二枚貝の中心部を85~90℃まで加熱してから90秒以上加熱することでノロウイルスに感染するリスクを下げることは出来ると言えるのではないでしょうか。

「加熱用」の牡蠣を生で食べては絶対にいけません

ノロウイルス感染といえば牡蠣をイメージされる方も多いと思います。スーパーで見かける牡蠣には「生食用」と「加熱用」があります。ノロウイルス感染を避けるためには「加熱用」の牡蠣を生で食べることは絶対にやめた方が良いです。

牡蠣の「生食用」と「加熱用」の違いは鮮度の違いではありません。

「生食用」は指定の海域でとれたことなど一定の基準をクリアした牡蠣です。「加熱用」の牡蠣は「指定海域」「検査」「浄化」などの規定がありません。

「加熱用」の牡蠣は加熱しないで食べると食中毒になる可能性がある牡蠣のことです。ですので「加熱用」の牡蠣を生で食べることはとっても危険です。

「生食用」の牡蠣なら生で食べても大丈夫?

「生食用」の牡蠣でしたら生で食べても大丈夫なのでしょうか。大丈夫なのかと尋ねられて絶対に大丈夫とは答えられません。

牡蠣がノロウイルスに感染していないと確認する方法がないからです。

ただ、ノロウイルスがある程度の量付着した牡蠣をみつけることはできます。生食用の牡蠣でも約10%の割合でノロウイルスに感染していた、とする報告もあります。

ノロウイルス対策としては、牡蠣などの二枚貝を食べる際は充分加熱してから食べる、生で食べる場合は「加熱用」は絶対に食べない、ということをご注意ください。

ノロウイルスによる食中毒の二次感染予防法

かつては食中毒は伝染しないと言われていたこともありました。ノロウイルスによる食中毒は人から人へうつります。ご家族がノロウイルスによる嘔吐・下痢症になった際の対応方法についてご説明いたします。

ノロウイルスに感染した人の嘔吐物と便には大量のノロウイルスが含まれています。そのような嘔吐物や便を処理・掃除する際には注意が必要です。

まず、お掃除をする人につかないようにしましょう。手についた状態でお料理をした場合、感染を広げてしまう可能性があります。

お掃除をする人は自分にノロウイルスがつかないように防御してください。排泄物をお掃除する際は髪に触れないようにヘアキャップをかぶるなどしましょう。メガネを掛けましょう。マスクをしましょう。

長そで長ズボンなどをはいて皮膚を露出しないようにしましょう。衣服に汚物がつかないようにエプロンをしましょう。ゴム手袋をはめましょう。足の裏にノロウイルスがつかないようにスリッパをはいて靴カバーをしましょう。

ノロウイルス患者の排泄物を処理する方法、注意点

体内のノロウイルスに効果的な薬はありません。薬用石鹸でもノロウイルスをやっつけることはできません。アルコール消毒は有用ではありますが、ノロウイルスはアルコール抵抗性の強いウイルスです。

ノロウイルスをやっつける最も強力なものは次亜塩素酸ナトリウムです。

濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウムに5分間浸した場合、ノロウイルスをほぼ死活化させることが出来ます。濃度1000ppmでは1分間程度を浸すことでノロウイルスをやっつけることが出来ます。

次亜塩素酸ナトリウム200ppmや1000ppmとは具体的にはどのようなものかというと、次亜塩素酸ナトリウムにはさまざまなものがありますが、代表的なものはハイターではないでしょうか。

5リットルの水にキッチンハイターかハイターをキャップ2杯(50ml)入れると200ppmの次亜塩素酸ナトリウムの出来上がりです。

1000ppmの次亜塩素酸ナトリウムは1リットルの水にキャップの2杯(50ml)キッチンハイターかハイターを入れれば完成です。キッチン泡ハイターでしたら薄めずにそのままスプレーして使えます。

次亜塩素酸ナトリウムの用意が出来ましたら次に窓を開けて下さい。次亜塩素酸ナトリウムは刺激の強い臭いがします。その刺激臭と空中に浮遊しているノロウイルスを外に出すためです。

患者さんの排泄物の上にかなり広めにペーパータオルをかぶせて下さい。床に嘔吐した場合半径2メートル程度まで飛び散っていることもあります。

そのペーパータオルの上から先ほど作った次亜塩素酸ナトリウムを薄めた液体をかけて下さい。その後10分ほど放置しましょう。

10分以上経ったらペーパータオルごと排泄物を回収してビニール袋に入れて下さい。その後、次亜塩素酸ナトリウムを含ませたペーパータオルで床全体を拭いて下さい。

その後、足を洗います。床にペーパータオルを広げてその上に次亜塩素酸ナトリウムを掛けて下さい。その上にのって足の裏についてノロウイルスを処理します。靴カバー、ペーパータオルをビニール袋に入れます。

お掃除の時に使った手袋、マスク、ヘアキャップなどはビニール袋に入れて次亜塩素酸ナトリウムを薄めて作った液に浸しましょう。

汚物、汚染された衣類、お掃除用具等ビニール袋に入れたものは燃えるゴミとして捨てましょう。

身近な食中毒だけに、感染予防はできるだけ行いたいものです。

感染してしまった人の排泄物の処理のとき、次亜塩素酸ナトリウムは消毒効果は高いですがその分取り扱いには注意が必要ですよ。

ロタウイルス:小さいお子さんが危険に!感染時の対処法

ロタウイルスは食中毒の原因にならない、とする情報もあります。厚生労働省はホームページ上で食中毒の情報を公開していますが、食中毒の原因のウイルスの項目にロタウイルスの情報はありません。

厚生労働省はロタウイルスに関しては感染性胃腸炎の項目の中でロタウイルスを取り上げています。その中ではロタウイルスが食中毒の原因であるか否かの記載はありません。

一方でロタウイルスが食中毒の原因であるとする情報は多数あり、その中には地方公共団体が発信している情報も含まれています。

ロタウイルスが食中毒の原因であるか否かに関わらず、ロタウイルスが人から人へ感染し、嘔吐、下痢の症状を引き起こすウイルスですので、今までの流れでここでもロタウイルスについてご紹介いたします。

まず大人はロタウイルスに掛っても重症化しません。いままでにロタウイルスに掛って免疫を獲得しているからです。

ノロウイルスが各年齢層を問わず感染するのに対して小児で猛威を振るうのがロタウイルスです。小児科外来でウイルス性急性胃腸炎にかかる患者さんの原因ウイルスはロタウイルスが1番多いのです。

5歳までにほぼ全員の子がロタウイルス胃腸炎にかかると言われています。

ロタウイルス胃腸炎の嘔吐、下痢は重症化しやすく、毎年約8万人の小児がロタウイルス胃腸炎で入院していると言われています。

日本でロタウイルス胃腸炎で亡くなる例は稀ですが、世界ではロタウイルス感染症が原因で毎年約50万人の小児が(5歳未満)亡くなっているとの報告もあります。

日本でロタウイルスを原因とする死亡者数がすくないのは衛生状態が良いことと小児科の先生の頑張りのお陰です。日本のロタウイルスの力が弱いという訳ではありません。つまり世界の子供たちと同じくらい重症化するリスクがあるということです。

なぜロタウイルスの嘔吐・下痢症は重症化しやすいのか

ロタウイルスの嘔吐・下痢症は脱水を起こしやすいため重症化のリスクが高い疾患です。脱水の主な原因は下痢です。ノロウイルスの場合、下痢が始まるころには嘔吐がおさまっているので口から水分を補給することが出来ます。

ロタウイルスの場合、下痢が始まっても嘔吐がおさまらないことが多く、そのため経口での水分補給がとても難しく、脱水を起こしやすいのです。

お米のとぎ汁の様な白い便が出るのがロタウイルスの特徴です。白い便が出た場合はロタウイルスを疑って下さい。ただ便が白くなくてもロタウイルスによる感染症である場合もあります。他にも

  • お子さんが元気がない
  • 目がくぼむ
  • 泣いても涙がほとんど出ない
  • けいれんを起こしている

などの場合はすぐに小児科を受診して下さい。

その他ロタウイルスとノロウイルスの違いは以下のようになります。

かかりやすい人 ノロウイルスは全員。ロタウイルスは5歳までの乳幼児。
ピークの時期 ノロウイルスは11月から1月。ロタウイルスは2月から4月。
潜伏期間 ノロウイルスは1~2日。ロタウイルスは2~3日。
症状 両方とも、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱
治療薬 両方とも、有効な抗ウイルス薬は無し
予防 ノロウイルスはワクチン無し。ロタウイルスはワクチン有り。

ロタウイルスの予防方法、掛った子の対処方法(絶飲食、水分・食事の与え方)、汚物の処理方法はノロウイルスと同じです。

ロタウイルスはとても感染力の強いウイルスです。ご家庭あるいは幼稚園でいかに感染予防に努めたとしてもロタウイルスに掛った子が嘔吐をしてしまったら、周りにいる乳幼児はロタウイルスに免疫がないので直ぐに感染してしまいます。

ロタウイルスは脳炎・脳症のリスクでもあります。小児の急性脳炎・脳症の原因第3位はロタウイルスです。日本では毎年約40人のお子さんがロタウイルスが原因で脳炎・脳症を発症しています。

脳炎・脳症は痙攣や意識障害を起こします。約4割の患者さんで麻痺等の後遺症が残ります。

日本では2種類のロタウイルスの予防接種ワクチンが認可されていて、これはとても効果の高いワクチンです。しかし、ロタウイルスに有効な抗ウイルス薬は有りません。任意のワクチンですのでお医者さんなどにご相談してみるのも良いと思います。

ウェルシュ、ビブリオ、サルモネラ…細菌性食中毒の感染予防と対処法

細菌が引き起こす食中毒にはどのようなものがあるのでしょうか。そもそも細菌とはなんなのでしょうか。

細菌は一つの細胞だけの単細胞生物です。遺伝子が膜で囲われていないのが特徴で、栄養と水と環境がととのっていれば自分だけで増殖することが出来ます。

細菌はあらゆるところにいます。上空8000メートルの大気中、水深1000メートルの海底、南極の氷の中にすらいます。通常は土の中や湖、沼に多く存在していて、私たちの皮膚や消化管の中にも存在します。

ご存知のとおり、私たちにとって良い働きをしてくれる細菌も沢山います。皮膚を守ってくれたり、消化を助けてくれたり、お味噌やお漬物お酒の発酵に働く細菌もいます。

とにかく細菌の種類は膨大で、良い細菌もいれば悪い細菌もいるのです。

このように細菌に囲まれた私たちは、食中毒を起こす細菌にどのように対処すれば良いのでしょうか。

細菌性食中毒の予防の原則は、食中毒の原因菌を

  • つけない
  • ふやさない
  • やっつける

です。

「つけない」ために気をつけることはマメに手を洗うことです。それと生のお肉やお魚が、加熱しないで口に入れるもの(サラダ、食器、お箸など)へ直接、間接につかないように気をつけましょう。

細菌は温度が高いと増えてしまいます。「ふやさない」ためには、お買いものをしてきたものを出来るだけ早く冷蔵庫に入れることです。スーパーで氷を貰ってきてレジ袋の中に入れて食材を冷やして持ち帰ることも大切です。

「やっつける」方法は加熱処理です。細菌もウイルスも熱で死滅します。お肉はキチンと火が通るまで焼きましょう。

平成27年の厚生労働省のデータでは食中毒の原因物質としてあげられている細菌は、患者数の多いものから以下の7つでした。

  • カンピロバクター
  • サルモネラ属菌
  • ぶどう球菌
  • ウェルシュ菌
  • 病原大腸菌
  • 腸炎ビブリオ
  • セレウス菌

これらの細菌が原因菌となる食品とともに具体的に見て行きましょう。

生のお肉に潜んでいる「カンピロバクター」は加熱調理でやっつけろ

鶏わさや牛のレバ刺し※などの生肉やお肉を焼いても充分火が通っていなかった場合に食中毒になることがあります。この原因はカンピロバクターと呼ばれる細菌であることが多いです。

※平成24年7月から牛のレバーを生食用として販売・提供することは食品衛生法により禁止されています。

カンピロバクターによる食中毒は、日本で発生件数の最も多い食中毒です。

カンピロバクターはあらゆる動物が保菌している細菌で、100個ほどの少ない細菌数で感染、発症します。

低温、湿潤、酸素不足を好む細菌のため冷蔵庫の中はカンピロバクターには快適な環境となります。

カンピロバクターは熱に弱い細菌です。お肉を焼く際は中心部を75度以上で60秒間以上加熱するようにして下さい。

抵抗力の弱い小さなお子さんやお年寄りは生肉を食べないことでカンピロバクター食中毒を防いで下さい。

タマゴの殻が危険!「サルモネラ菌」の温度管理は

タマゴの殻にはサルモネラ菌がついていると聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。サルモネラ菌はカンピロバクターとならんで日本でもっとも食中毒を起こす細菌の1つです。

鶏卵の殻にサルモネラ菌が付着しているため卵を洗えばサルモネラ菌の感染を防げると考えられていた時期もありますが、現在は、黄身、白身にもサルモネラ菌が存在していることが分かっています。

お店で売られている卵の殻は食品衛生法に基づき殺菌がされています。

問題は卵の中のサルモネラ菌です。サルモネラ菌は20度以上で良く増殖します。サルモネラ菌には多くの種類がありますが、一般的なサルモネラ菌は10万個以上の細菌数で感染、発症します。

サルモネラ菌は10度以下では繁殖しないため冷蔵庫の中に保存しておけば、感染力を持つほどの細菌数にならないので生で食べても大丈夫です。

ただ、卵の鮮度が落ちると冷蔵庫内でも増殖する可能性があります。

卵を生で食べる場合は賞味期限内にお召し上がりください。ちなみにこの卵の賞味期限は生で食べられる期間を表しています。過熱して食べるのでしたら賞味期限を過ぎても卵は食べられるのですよ。

加熱して召し上がられる場合は食べ物の中心温度が75度で60秒間以上加熱して下さい。65度ですと5分間以上加熱の過熱が必要となります。

手で握ったおにぎりに菌が…「黄色ブドウ球菌」

かつて日本でよく見られた食中毒はおにぎりが原因でした。原因の細菌は黄色ブドウ球菌です。

黄色ブドウ球菌も普通にそこら中にいる細菌です。人の皮膚、毛穴、鼻の穴の中に多くいます。手などを怪我した時に化膿することがありますが、その化膿した部分に黄色ブドウ球菌は大量に発生します。

黄色ブドウ球菌は30度から37度で良く増殖します。まさに夏の気温です。おにぎりなど直接食べ物に手が触れる料理は手から食品に黄色ブドウ球菌がついてしまう可能性があります。

おにぎり、お寿司、お弁当などのお料理の時は食べ物に手を触れる前に手を良く洗いましょう。お料理の途中に髪の毛や顔を触った場合も黄色ブドウ球菌がついてしまう可能性があります。そのような時もマメに手を洗いましょう。

そして先程お話ししたように手にけがをしている場合は黄色ブドウ球菌が沢山てについている可能性があります。手にけがをしている時におにぎりなどを作るのは控えましょう。やむを得ない時は薄手のビニール手袋をはめて作りましょう。

もしおにぎりなどに黄色ブドウ球菌がついてしまった場合はどうなるのでしょうか。

黄色ブドウ球菌は5度以上で増殖します。暖かいところに長時間置きっぱなしにしていると黄色ブドウ球菌がどんどん増えて行きます。

沢山増殖した黄色ブドウ球菌はエンテロトキシンという毒を吐き出します。これが食中毒の原因になります。エンテロトキシンは加熱しても毒性を失いません。ですので菌が増殖し毒を出した後では焼きおにぎりにしても食中毒は防げません。

黄色ブドウ球菌による食中毒を予防するには、以下の2点が重要です。

  • マメに手を洗う
  • 食品を暖かい場所に長時間放置しない

黄色ブドウ球菌による食中毒は80年代半ばまでは毎年200件以上報告されていて、全食中毒に占める黄色ブドウ球菌食中毒の割合は25%~35%くらいでした。1997年には3%まで減少し、全体的にも黄色ブドウ球菌の食中毒は激減しています。

黄色ブドウ球菌の食中毒が減少した理由はおにぎりによる食中毒が減ったためと考えられています。

石鹸が良くなったのか、手洗いの習慣が定着したのか…コンビニのおにぎりが普及したからでしょうか。

カレーライスで有名な「ウェエルシュ菌」

カレーライス、シチュー、おでん等の煮ものであたった場合、その原因菌はウェルシュ菌である可能性が高いです。

ウェルシュ菌は人間や動物などの腸の中に普通にいる常在菌です。善玉菌のビフィズス菌と対比されてウェルシュ菌は悪玉菌の代表とされることがあります。おならの臭いの原因にもなります。

日本でのウェルシュ菌を原因とする食中毒の事件数は年間で平均30件程度です。事件数としては少ないのですが、1事件あたりの平均の患者数が約84人と多いのが特徴です。給食菌あるいはカフェテリア菌と呼ばれることもあります。

これはご家庭での発生が少ないことも特徴です。

牛、豚、鶏肉などの食用肉がウェルシュ菌に汚染されていることが多くあります。

ウェルシュ菌自体は熱に弱いので加熱調理をすれば死滅させることが出来ます。

しかしウェルシュ菌は芽胞(がほう)と呼ばれるものに形を変えることが出来、この芽胞がとっても熱に強いのです。

100度の熱に6時間耐えるものも中にはありますが、芽胞自体を食しても問題はありません。

ウェルシュ菌を1千万から1億個以上の食べてしまった場合に、腸の中でウェルシュ菌が増殖し、芽胞が形成されます。その際に毒素が産生されます。その毒素により食中毒となります。

ですのでカレーライスなどの煮物を作った直後はウェルシュ菌自体の数が少なく問題にはなりません。問題は作り置きをした場合に起こるのです!

カレーライスのルーを加熱調理した場合、ウェルシュ菌は芽胞の形で静かにしています。この作ったカレーを置いておきますと徐々に熱が下がっていきます。

カレーのルーの温度がだいたい45度くらいまで下がると芽胞から通常のウェルシュ菌に戻ります。そして10分間に1回の速さで分裂して増殖し始めます。

作ったカレーを室温で保存時徐々に冷ましていくとこのような理由でウェルシュ菌が鍋の中で増殖してしまうのです。でもこの段階ならまだ問題にはなりません。温め直す時に75度で15分以上加熱すればウェルシュ菌は死滅するからです。

さらにウェルシュ菌は空気にも弱い細菌です。そのため調理する時、温めなおすときは良くかき混ぜてカレーの中に空気を含ませるようにしましょう。

つまり、カレーライスなどの作り置きをした煮物を温め直して食べる時は、次の点に注意をしましょう。

  • 保存する際は小分けにしましょう。早く冷めます。
  • 保存する際は10度以下、あるいは50度以上にしましょう。
  • 温め直す際はしっかりかき混ぜながら充分加熱しましょう。

ウェルシュ菌について詳しい記事もありますよ。
煮込んでも安心出来ない?特に夏場は注意!カレーの食中毒を予防

あらゆる食品に潜む、危険な「病原性大腸菌」は家庭で十分予防できる

大腸菌は健康な人の腸の中にもいる細菌です。とても種類が多く現在約180種類に分類されています。大部分は無害な細菌なのですが、一部とても危険な大腸菌があります。それはO-157、O-26、O-111です。

O-157、O-26、O-111は腸管出血性大腸菌と呼ばれています。この大腸菌に感染、発症すると血の混じった下痢が出るためこのように呼ばれています。年間に3000人から4000人の人がこれらの大腸菌に感染していると報告されています。

腸管出血性大腸菌はわずか50個ほどで人に感染、発症すると言われています。また、酸に強い細菌であり、胃酸の中でも生き残って腸に到達します。

1997年に開催された腸管出血性大腸菌O157に関する世界保健機関(WHO)の専門家会議では腸管出血性大腸菌が各種様々な食材や食品から見つかっていることが報告されました。

大腸菌による食中毒の原因食品はあらゆるものにおよぶ可能性がありますが特に危険なのは肉類です。

腸管出血性大腸菌は加熱および消毒薬により死滅します。ご家庭での予防方法としては手洗いと食肉の充分な加熱です。お肉の中心が75度で1分以上加熱することが大切です。

生魚にあたるのは「腸炎ビブリオ」が原因のことが多い

生魚で当たるのは主に「腸炎ビブリオ」という細菌が主な原因です。

腸炎ビブリオは海の中にいる細菌です。海の幸についている菌なので、それらを生で食べた場合腸炎ビブリオが原因で食中毒になる可能性があります。腸炎ビブリオは細菌数100万個以上で人に感染します。とてもたくさんの菌がないと感染、発病しません。

ただし腸炎ビブリオはとても早いスピードで増えて行きます。10分間に1回の割合で細胞分裂して1個の細菌は2個になります。2個の細菌はまた10分後に4個になります。細菌の数は分裂した回数をnとすると2のn乗個に増えます。

この計算で行きますと1個の腸炎ビブリオは3時間30分には100万個以上に増えるのです。もちろん買ってきたお魚に腸炎ビブリオが1個だけということはありません。もともと沢山の腸炎ビブリオがついていれば、それだけ早く100万個に増殖します。

腸炎ビブリオによる食中毒を予防するためには腸炎ビブリオをまず増やさないことが大切です。腸炎ビブリオは15度以下では増殖しません。冷蔵庫の温度はJIS規格で10度以下と定められています。

買ってきたお魚などは直ぐに冷蔵庫に入れましょう。 知合いの奥さまと立ち話をしている間にも腸炎ビブリオは増殖を始めてしまいます。

腸炎ビブリオは海の中にいる細菌ですので真水に弱いです。お魚を生で食べる前には真水で良く洗いましょう。

ご飯やスパゲッティーを放置すると発生する「セレウス菌」

ご飯もので食中毒になった場合は「セレウス菌」の可能性があります。

セレウス菌は土壌の中にいる細菌です。そのためお米などの農作物から出来ている食品へのセレウス菌の汚染を完全に防止することは実際問題不可能と言われています。

多少のセレウス菌を口に入れても食中毒にはかかりません。

セレウス菌はウェルシュ菌と同様に芽胞に変化することが出来ます。芽胞は熱に強いためご飯を炊く温度やスパゲッティーを茹でる温度では死滅しません。

炊けたご飯や茹であがったスパゲッティーを放置しておくと芽胞がセレウス菌に戻って増殖を始めてしまいます。細胞数が10万個以上になるとセレウス菌は毒素を作りだします。

この毒素がまた熱に強く、約130度の高温でも破壊されません。このため、炊けたご飯を後から調理したチャーハンなどでも食中毒を起こしてしまいます。

炊けたご飯や茹であがったスパゲッティーを常温で2時間以上放置するのはやめましょう。そうすればセレウス菌による食中毒は予防することが出来ます。

私たちはウイルスや細菌に囲まれて生活している

微生物は目に見えないため普段は意識しませんが、私たちはウイルスや細菌に囲まれて生活していると言っても過言ではありません。

ウイルスや細菌がそこらじゅうに居ること、そしてそれらが食中毒の原因であることを知ってしまうと日々の生活に神経質になってしまうかもしれません。

でも冷静に考えればウイルスや細菌に囲まれて生活をしていても私たちは今日までなんとか生きてくることが出来ました。なぜでしょうか。

それは私たち体には免疫システムがあるからです。

平成27年に発生が報告された食中毒患者数は22,718人でした。平成27年12月1日時点での日本の人口は127,103,490人です。

年間に2万人もの人が食中毒にかかっていると考えることも出来ますが、一方で食中毒にかかった人の割合はわずか0.018%とも考えることも出来ますよね。

それぞれの食中毒の特徴を知り、食中毒の発生を予防し、いざという時に慌てないように対処法を知る手だてを身につけておけば、日々の生活にそれほど過剰に神経質にならずに済むのではないでしょうか。

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