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トランス脂肪酸を含む食品は脂質異常症の原因!心臓病にも?

トランス脂肪酸、最近よく聞くようになった食品用語ですが、さて、どのようなもので、どのような害があるのでしょうか。そして害があるなら、どのくらい食べれば害があるのかも気になりますよね。実はまだまだ研究段階で、はっきりしている部分は少ないのです。

取り敢えず善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やし、心筋梗塞のリスクが高まることは確実だとされています。そしてどのくらい食べれば危険なのか、これもはっきりしていませんが、世界保健機構は発表した暫定値(総カロリーの1%未満)以内の摂取にとどめるよう、勧告しています。

トランス脂肪酸とは

トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の取り得る二つの形のうちの一つで、もう一つはシス脂肪酸という形です。例えば、工業的な加工を施された油脂に含まれる代表的なトランス脂肪酸に、エライジン酸というものがあります。

そして健康に良いことで知られるオリーブオイルの主成分は、皆さんよくご存知のオレイン酸ですね。実は、オレイン酸とエライジン酸は、化学式で書くと同じ式になります。また不飽和度を表す二重結合の数も同じ、その位置も同じω-9です。

それなのに片方は健康に良くて、もう一方は悪いと言われます。一体何が違うのでしょう。ちょっと例えてお話ししましょう。「男性が両手に赤い旗を持っていて、旗を上げるか下げるかしている」という言葉で表現したとします。

この場合、その人が両手の旗を同時に上げるか下げるかしている人と、左右の上げ下げを逆にしている人とでは、全く異なった状態になりますよね。分子の構造を表す式で書いた場合、シス型の方は両手を同じ向きにしていて、トランス型は逆にしていると言えるのです。

そして、この旗を持っている二本の手は、分子構造式では二重結合と呼ばれる部分ですので、二重結合を持たない飽和脂肪酸には、トランス型もシス型も存在しません。このように、同じ化学式で表される物質が違う構造を持っているものを異性体と言いますが、異性体は互いに化学的性質が異なるのです。

これをちょっと難しい言葉で言うと、エライジン酸はオレイン酸のトランス異性体である、ということになります。

食べるプラスチック?

このトランス脂肪酸の害をアピールされている方々の間では、トランス脂肪酸は食べるプラスチックであるという表現をされていることが、よく見受けられます。しかし、これは明らかな間違いですし、ややもするとトランス脂肪酸の害を過小評価させる原因にもなりますから、こうした表現は避けた方が良いかと思います。

と言うのも、もし食べるプラスチックというものがあるとして、「食べる」と書かれている以上、それは食品として認められたという事になります。例えば一時人気を博した「食べるラー油」。あれは食品ですよね。しかもかなり美味しい…私は大好物です。

そしてプラスチックとは高分子化合物をアバウトに示す俗語ですが、脂肪酸はそもそも高分子じゃありませんので、表現自体がでたらめすぎます。でたらめな表現を使って食品を忌避していると、それに害がないとする食品メーカーなどに論破される弱点を、わざわざ準備しているようなものですね。

はっきりしている害、まだあいまいな害

トランス脂肪酸を食べるとどのような害があるかには、まだまだ研究が足りないようですが、それでもいくらかは分かってきているようですので、ご紹介しましょう。

全てもしくはほぼすべての研究で結果が一致している害

心筋梗塞などの冠動脈性心疾患にかかるリスクを高めることは確実視されています。また、直接リスクを高めるLDL(悪玉)コレステロールの値を押し上げるだけではなく、HDL(善玉)コレステロールを減らしてしまいます。

つまり脂質異常症の3要因のうち、2つの原因になるわけですね。こうした影響は、過去に考えられていたよりも大きかったという報告がありました。(2008年WHO/FAO)

大多数の研究で結果が一致するが、一致しない結果もある害

冠動脈性心疾患による死亡、突然死、および糖尿病にかかるリスクを高める、という研究結果が多く出ています。メタボリックシンドロームの診断基準になる内臓脂肪、コレステロール、中性脂肪、血圧、空腹時血糖の数値を高めるという事も、大多数の研究が示しています。

どの程度食べると害があるのでしょう

世界保健機関WHOは、暫定的に総摂取カロリーの1%以内としていますが、同時に将来少ない方へ見直す必要性も認めています。ですので、できるだけ食べない方が良いという程度の判断しか、現状ではできません。

計算方法は?

総摂取カロリーの1%と言われても、そもそもトランス脂肪酸の量なんて、日本の食品には表示されていませんので、余計に分かりにくいものです。統計によって数値にばらつきはあるものの、日本人は平均で0.3~0.6%程度しかトランス脂肪酸を食べていないようですので、それほど害を気にしないでもいいだろうという意見があります。

ただ、同時に個人差が大きく、人によっては摂り過ぎている可能性を否定できないことも事実ですので、外食が多い人などはちょっと注意は必要ですね。最近では大手外食チェーンなどで、トランス脂肪酸排除を宣言しているところもありますので、そうした情報も利用可能でしょう。

人工の脂肪酸なのでしょうか

人工物、あるいは人工的に加工する過程で生まれた副産物だと思われることが多いのですが、トランス型脂肪酸は自然界にもともと存在します。例えば、反芻動物の脂肪には微生物の働きで生成されたトランス脂肪酸が、数%の割合で含まれています。

ですので、豚は反芻動物じゃないので、ラード(豚脂)にトランス脂肪酸は非常に微量しか含まれませんが、ヘット(牛脂)には3%弱のトランス脂肪酸が含まれています。

トランス脂肪酸を多く含む食品

これには二通りの例があります。ひとつは、油脂そのものが加工された油で、その加工過程においてトランス脂肪酸が生まれたもの。もう一つは、不飽和脂肪酸が調理の際の加熱によってトランス化したもの。この二種類です。

しかしながらよほどの高熱と油の劣化、そしてトランス化しやすいシス脂肪酸の存在が必要な後者に比べて、前者は安定的にトランス化が起こりますので、こちらに注目しましょう。

水素添加とトランス化

世の中には硬化油という食用油脂が存在します。これはマーガリンやファットスプレッド、ショートニングなどをまとめて呼ぶ時の名前です。もともとは液体の油であったものを、バターやラードのように半固形にして、扱いやすい状態にした加工油脂のことと思って下さい。

この硬化油にトランス脂肪酸が大量に含まれるのです。動物由来のバターやラードはどうしても価格が高く、供給の安定度にも問題が生じがちですよね。2007年くらいに始まり、2014年のクリスマス前になっても相変わらず不足が続いていたバターを見れば、一目瞭然かと思います。

そこで、供給量が安定していて価格が安い魚の油や植物油を原料に、バターの代替品が作られたのがマーガリンの始まりで、日本でも明治時代に生産が始まったそうです。昔はクジラの油が原料になったこともあったそうですよ。今じゃとってもレアな超高級品ができそうですね。

さて、植物油は普通液体なので、バターの代用にはしにくいです。そこで植物油に多い不飽和脂肪酸を、飽和させてしまうという手法が考えられました。これが水素添加(水添)です。

ただ、全部が飽和してしまうと固くて割るのに電動工具が必要になっちゃいますから、一部だけを飽和させるという作り方をします。その際、不飽和のまま残った脂肪酸の一部が、シス型からトランス型に姿を変えるという現象が起こるため、高いトランス脂肪酸含有率の原因になっているのです。

ですのでマーガリンを例にとると、重量比でおおむね10%程度、ファットスプレッドで6~7%程度のトランス脂肪酸が含まれています。ラードの代用品として同じ手法で作られたショートニングは、12~15%程度含まれていますので、ちょっと怖いかも。

天然のトランス脂肪酸は安全?

現在、トランス脂肪酸の規制や表示を義務化している国々でも、天然由来のトランス脂肪酸は対象外となっています。では天然由来のトランス脂肪酸は安全なのでしょうか。実は十分な研究成果がなく、現段階では含有量が微量なので、問題がないことにしているというのが実情です。

しかしながらバターで2%内外と、マーガリンの1/5程度とはいえ微量だから問題ないというのは、どうかという気持ちにもなります。現段階では多くの国で含有量の表示義務にとどまっていて、使用制限や禁止を謳っているところは少数派です。

アメリカの一部の州では、州単位で使用禁止や制限を決めているところもありますが、合衆国としての規制はありません。推測の域を出ませんが、世界で最初にトランス脂肪酸の含有量制限を法的に定めたのはデンマークです。

デンマークは領土紛争の結果、耕作地を失い酪農に活路を見出した酪農王国ですね。その国がバターのライバルに多く含まれる物質を規制したというのは、何がしかの政治力学が働いたのかもしれません。

しかしながら、それは加工油脂由来のトランス脂肪酸の危険性を否定するものではなく、天然のトランス脂肪酸の危険性を隠すことになっていないか、という不安要素にすぎません。いずれにせよ含有比率は低いわけですから、バターを使い、マーガリンやファットスプレッドを避けるという方向で、安全は担保されるでしょう。

また、ファットスプレッドの方が一般にマーガリンよりトランス脂肪酸の量が少なく見えますが、これは重量比で求めた結果そうなっているだけです。ファットスプレッドはもともと油脂分が少なく、水分の多い食品ですので、油脂分以外の重量にはトランス脂肪酸も含まれませんから、比率が下がるわけですね。

現段階で血中脂質や心臓を悪くしないために

トランス脂肪酸を一切口にしないという事は、かなり困難を伴いますので、わざわざトランス脂肪酸の量の多い油脂は、食べないということで健康を守りましょう。

  • マーガリン・ファットスプレッドは使わない。
  • 既製品の揚げ物やお菓子はショートニングを使っていないものを選ぶ。
  • 全ての加工食品において、硬化油と表示のあるものは避ける。

この三つを意識するだけで、かなり良い食生活になることでしょう。

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