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有酸素運動の時間がなくてもOK!短時間で血糖値を下げる運動

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糖尿病の予防や改善には毎日の有酸素運動が欠かせないといわれています。もはや常識といっても良いでしょう。

一方で有酸素運動は最低でも20~30分、どうしてもまとまった時間が取れないなら5分程度の細切れでもいいから積算で毎日30分の有酸素運動をしましょう、ともいいますね。

でも、社会人として毎日を生きているとなかなか30分の運動時間っていうのは取れないもんです。それに細切れにして5分を二回やったから今日はもういいやってなることもよくありますよね。

そこで考え方を変えましょう。実は血糖値を下げるには無酸素運動の方が効果的なのです。そして無酸素運動は回数が必要とはいえ、一回10秒で効果が発揮できる優れものでもあるんですよ。

運動と血糖値の関係

まず、なぜ運動をすると血糖値が下がるのかという事から見て行きましょう。

食事をすると血糖値が上がる

血糖値とは簡単にいうと血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。お米や小麦のでんぷんはブドウ糖がたくさん集まった多糖類という糖質です。ですのでブドウ糖にまで一旦分解してから利用されます。

また普通のお砂糖、ショ糖はブドウ糖と果糖(フルクトース)が結びついた二糖類というものに分類されていて、食べるとすぐにブドウ糖と果糖に分解されて血糖値を瞬時に押し上げます。

この果糖はまた、肝臓でその1/10くらいがブドウ糖に変換され血糖値を上げるのです。

血糖は本来すぐに利用される

ブドウ糖はいろいろな働きで筋肉の細胞に取り込まれエネルギーとして使われるか、脂肪細胞に取り込まれて貯蔵用の脂肪に変換されるようになっています。

しかしブドウ糖はその分子構造が原因で、そのままでは細胞膜などの生体膜を通過することができません。ですので、細胞の中へ案内してくれる運び屋さんが必要なんですね。

そこで登場するのがグルコース輸送体と呼ばれるたんぱく質です。略号はGLUT(GLUcose Transporter)で、これには1から12までの番号が振られていて、それぞれ役目が異なります。

その中でも血糖値に最も大きな影響を及ぼすのがGLUT1とGLUT4です。GLUT1は人間のすべての細胞で呼吸に関わるエネルギーをブドウ糖から得るために広く分布しています。

その中でも、人間の体の中で唯一糖質からしかエネルギーを得られない赤血球に最も多く存在しています。脳にブドウ糖を送る役目を担っているのもこのGLUT1なのです。

このGLUT1はホルモンなどの分泌に関わらず常に細胞表面にあって手当たり次第ブドウ糖を取り込みますが、血糖値が上がると細胞表面から減り、血糖値が下がると増えて、常に取り込み量を安定させてもいるのです。

一方、GLUT4は骨格筋や心筋・脂肪細胞に多く含まれ。普段は細胞の奥に沈んでいます。血糖値が上がってインスリンが分泌されると細胞表面に浮かび上がってきて血糖をどんどん取り込み始めます。

運動で血糖値が下がる理由

さて、上の説明でインスリンという糖尿病の人には非常に気になるホルモンの名前が出てきました。このインスリンが不足したり効きが悪くなったりしているのが糖尿病です。

じゃぁGLUT4に働いてもらえないじゃないかと思われるかもしれません。しかし、インスリンに依存せず筋肉に血糖を取り込ませるルートも存在するのです。

筋肉も動くときにエネルギーを消費します。エネルギーを消費した結果出てくる物質がAMPキナーゼという名前の物質を活性化させます。このAMPキナーゼはインスリンと同じくGLUT4を筋肉細胞の表面に移動させるのです。

つまり、インスリンに頼らなくても筋肉に血糖を取り込ませることができるんです。そうして血糖値が下がるので運動が糖尿病に有効だという事になるわけです。

具体的に何をすればいいのか

では本題です。ならばどのような運動をすれば糖尿病に対して予防や改善の効果が得られるのでしょうか。

一回10秒の筋肉の緊張と弛緩

まず実際にやってみましょう。

体をリラックスさせて、胸の筋肉に力を入れてください。傍目に姿勢が変わったように見えないよう、反対側の筋肉にも力を入れて下さいね。

それを全力の6~7割の力(筋肉がプルプルしない程度)で10秒(15数えるくらいの間)維持してから緩めます。これで一回の運動は終わりです、簡単ですね。

次に脇を締め肩を引き下げるような感じで背中の筋肉に力を入れてください。姿勢を変えないようにしようと思うと胸にも力が入りますね。15数えたらOK、これで終わりです。

あるいは太ももにぐっと力を入れて15数える、おしりの筋肉に力を入れて15数える、意識して力を入れることのできる筋肉について、気が向いたときに力を入れて15数えるというのを習慣にするだけでいいのです。

他人の目を意識せずに済む場所でなら、両手を合わせて互いに押し合う、指をひっかけて互いに引き合うという運動は効果的です。女性ならバストアップ体操でおなじみでしょう。

頭の後ろで手を合わせてやると肩の筋肉が鍛えられます。腹筋を鍛える場合は息を吐きながら上の筋肉から下へ、あるいは逆に下から上へと力を入れる運動も効果的です。

これらは基本的に全部無酸素運動ですが、呼吸を止めちゃだめですよ。ゆっくり息をしながら力の出し入れをしてください。

なぜ無酸素運動が有効なのか

一番大きいのは一回の運動に時間を取られないから気軽に継続できるという事です。無酸素でも有酸素でも運動が血糖値の改善に役立つのは事実です。

しかし、5分とか10分とかのまとまった時間が必要になると忙しい社会人に続けることは困難でしょう。でも秒単位で時間を捻出できないのであればちょっと生活を見直した方が良いかもですよ。

そして、実際に筋肉にブドウ糖を取り込ませるためには弱い運動を長く続けるより強い運動を短時間やる方が効率的なのです。

それにこの運動で筋肉が鍛えられて大きくなると、それだけで取り込めるブドウ糖の量が増えるわけです。筋肉が増えると同じ運動をしても取り込める量がぐっと増えるのでお得ですよね。

もともと血糖やグリコーゲン(ブドウ糖貯蔵用の物質)は体の中にそれほど多くあるわけではないので、運動強度の強い時に集中して使われ、運動強度が弱くて持続する場合は脂肪を使う比率が高まります。

ですので、血糖値を下げる場合には無酸素運動を上手に利用するのが適しているのです。

それに強い強度の運動を行って血糖やグリコーゲンが消費されて不足すると、運動の後から脂肪を分解して適正な値にまで血糖やグリコーゲンを増やしてくれますから忙しい現代人にはぴったりなんですね。

では有酸素運動は役に立たないのかというとそうじゃありません。糖尿とは直接関係ないものの、心肺機能の向上には圧倒的に有酸素運動が有利です。

回数と持続時間

では実際に効果を上げるには、その10秒の運動をどのくらいやればいいのでしょうか。これは一概にいえませんし、毎日1回しかやらなければ全然効果がないというものでもありません。

1回やれば1回分の効果があり、その分筋肉が衰えるのを遅くしてくれ、それだけ血糖の取り込み量が減るのを防いでくれます。

100回やればその分筋肉が増え、血糖の取り込み量が増えて血糖値が下がります。

一番いけないのは完全にやめてしまう事で、運動することを忘れてしまった日が一年続いたとしても、その翌日から再開すればそれはその分だけ効果はあります。

一方で一日に多くやり過ぎて疲れてしまい、それから長い間やらなかったら、やった日とそれから数日は効果が続くものの、努力した割には効果が薄くなってしまいかねません。

ですので、気が付いたらちょっと体に力を入れてみる、それを習慣にしてみましょう。

運動模倣薬

ここからは余談になります。それでも知識と知っておいて頂いても良いと思うので書かせてもらいますね。

実は運動したのと同じ効果をもたらすかもしれない物質が見つかっています。脂肪細胞が分泌するアディポネクチンという生理活性物質です。

これは運動した時と同じようにAMPキナーゼを活性化させ、インスリンの分泌に頼ることなく筋肉に血糖の取り込みを行わせることができるらしいことが解明されてきているようです。

現在、運動が困難な高齢の患者さんや複合した病態の患者さんなどの福音になるかもしれないという事で、治療薬としての可能性が探られているようです。

とはいえアディポネクチンはたんぱく質ですから飲み薬にはならないでしょう。口から入れて吸収される前にアミノ酸に分解されたんじゃ意味ないですからね。

このことはペプチド(短いたんぱく質)ホルモンであるインスリンも同じで、飲み薬にすると吸収される前に分解されちゃうから注射しか方法がないんです。

今はっきり判っているのはアディポネクチンの血中濃度は内臓脂肪の量に反比例するという事だそうです。

内臓脂肪は運動で減らせますから、やっぱり運動が一番、ってことなんでしょうね。

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