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うつ病に使われる薬は本当に危険?うつ病治療での薬の役割とは

うつ病を調べようとしたら、ネットでも書店の陳列棚にも、必ず薬に対する危険性が書かれた物があります。この薬とは、抗うつ薬を含む向精神薬のことです。この向精神薬に対しては昔から賛否両論がありました。

うつ病治療に置ける向精神薬への危険性を訴えてきた歴史は、非常に古いものです。しかし、残念ながら相手にされませんでした。最近になり、うつ病が一般的な病気になったことから、問題が再炎しました。非常に加熱しています。私達はその加熱した内容をどう受け取れば良いのでしょう。

向精神薬に対する自殺と問題点

2010年、厚生労働省より、向精神薬の処方についての注意喚起が行われました。抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などの「向精神薬」の飲み過ぎが自殺につながっている可能性がある、とのことでした。

2006年7月~2010年3月までに自殺した人1,016人を対象にした調査で、なんと、およそ70%の人が“向精神薬を多数服用”していたのです。さらにこのような飲み方(処方の仕方)の問題と共に、向精神薬そのものの問題点も指摘されています。

向精神薬に対する問題点(副作用)を上げます。

  • 頭痛
  • 眠気
  • 便秘
  • 口渇
  • 頻脈
  • 感情の喪失
  • 抑うつ症状の悪化
  • 肥満
  • 性機能障害
  • パニック症状
  • 全身硬直
  • ひきつけ
  • 眼球の反転
  • 他害行為(暴力)、など

向精神薬の効果

うつ病による向精神薬は抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などです。抗うつ薬と抗不安薬は、その名前の通り、うつ状態や不安状態を緩和します。これらの薬では処方された人の50~60%が症状軽減をしています。誤診でうつ病と診断されるケースが多いので、これでも比較的高い確率と言えます。

最近米国で行われたうつ病に対する薬物治療の大掛かりな調査では、1年間でおよそ3,000人のうち約30%が寛解(精神疾患での完治的な意味)しています。しかし、その約60%が再発しています。薬での治療でもある程度の効果が認められます。

うつ病で実際に服用している人も、不安が軽減されている人がほとんどです。しかし、寛解率と再発率をみる限りでは、一時的な処置としてみるべきでしょう。頼りすぎるのは危険です。しかし、現状の日本では必要です。

精神医療被害連絡会でも報告されていますが、自殺問題の大きな原因は、不適切な処方にあることです。そして、処方時の説明や、処方後の観察などの必要な処置を怠っているためです。適正な処置をすれば、効果が認められます。

ある夫婦の向精神薬に対する話

これは実際に起こった話です。夫がうつ病になった夫婦がいました。夫のうつ病は深刻な状態です。会社を退職しました。この夫婦はネットなどでうつ病について調べ、向精神薬に対し危険視するようになりました。

特に奥さんは非常に強く嫌悪し、薬害を信じてネットなどで配信もしていました。夫はうつ病が悪化していきます。精神的な不安定が続くので、奥さんとも衝突します。当たり前の状態です。夫のうつ病が深刻な状態下で、夫婦は離婚しました。

夫はその後すぐに自殺で生涯を終えました。数々の対応の間違いがありますが、最も大きいのはこの状況下での離婚と、向精神薬に対する対応です。向精神薬の拒否に対し、治療に効果的な他の対応を取っていないのです。

うつ病治療の本質的問題点

向精神薬は、うつ病治療にとって現状なくてはなりません。確かに向精神薬には多くの問題があり、応急処置的な効果に留まります。しかし、実際に効果があることには間違いありません。服用する必要性はあります。しかし、服用するにしても、やはり問題があるのです。問題を2つあげます。共に医師側の問題です。

1.多剤大量処方。
2.治療が薬のみに偏り、認知行動療法、対人療法などの本質に届いていない。

病院での治療は薬の処方が中心です。精神科医の多くはこの薬の処方しか行わず、本質的な改善に対する専門的な言及はありません。本質的な改善とは、うつ病を引き起こした性格/考え方、さらに環境についてです。それはまるで、歯痛に対し痛み止めの薬の処方しかせず、虫歯の治療をしていないことと同じです。

多剤大量処方

以前は病院で過剰な服飲「多剤大量処方」を勧められることが多くありました。それは複数の要因があります。

1.短時間診療の多剤大量処方は、大きな利益につながること。
2.薬剤会社からの情報を鵜呑みにし、副作用を軽視してしまうこと。
3.精神医学教育においても薬物療法が中心であるため、など。

2012年7月に日本うつ病学会は、それらをふまえてガイドラインをまとめています。その中で多剤大量処方の危険性や、薬の処方の仕方などが細かく設定されています。それ以降は多剤大量処方が控えられてきています。

特に1と2は、製薬会社と医療現場による利益重視の発想で、決して認められるものではありません。しかし、残念ながら、この問題が今でも根底に潜んでいることは、認めざるを得ません。

うつ病治療の本質「心理療法」

うつ病はストレスが主たる原因です。そのストレスは心理的な物です。対人問題や認知などに対し、修正をかけていかなければなりません。この問題に触れなければ、本質的改善になりません。

英国の調査でも「抗うつ薬による、うつ病再発の危険性に対する減少効果を認められない」との結論が出され、うつ病治療は心理療法である「対人関係療法」と、「認知行動療法」などを、薬治療と組み合わせることを指示しています。さらに日本の精神神経学会の総会でも、うつ病の回復に対してこのような内容が発表されています。

・治療の第一歩は正確な診断であり、適応障害や双極性障害を的確に診断する必要がある。
・その診断に沿った適正な治療方針を立てる必要がある。
・急性期治療においては心理教育が重要。患者との共通理解を得て治療を進める必要がある。
・維持治療、継続治療期には、生活のリズムを安定させ、作業能力の回復、対人ストレス対処能力の向上を図る必要がある。
・うつ病に合併する自己愛性パーソナリティ障害、広汎性発達障害にも留意する必要がある。

本来なら薬に加え、これだけの留意が必要であるとの見解があるのです。しかし、日本では誤診も多いうえ、心理療法の専門的な機関や組み合わせを提案してくれる精神科医は少なく、極めて貴重です。

カウンセリングを受けようとしても、日本では医療として認められていません。そのため、健康保険のような減額の制度がなく、個人負担が大きいことも大きな問題です。認知行動療法の専門機関があることさえ知らない人はたくさんいます。

認知行動療法を行えば薬はいらない

認知行動療法などの心理療法を専門機関で行った場合、薬と同じ効果があると言われています。しかし、再発率は薬のみの治療よりとても低いのです。再発しにくいのです。米国や英国などの研究では、「認知行動療法のみ」の治療と、「認知行動療法+薬」の治療では、ほぼ同じ結果が出ています。

なら、薬は必要ありません。これは大きな希望で本質的ですが、認知行動療法がまだ一般的ではない日本においては、薬との併用が必要だと考えてかまいません。これはあくまで成熟した専門家に治療を受けた場合であり、ネットなどで溢れている“自分で治す”ものとは違います。

逆に成熟した専門家と相談のうえ、薬を無くすのであれば、それは素晴らしく、挑戦する大きな価値があります。“自分で治す”ものにも、素晴らしいものはたくさんあります。ネットや本などで紹介しているものは、自分でできることを支援するタイプのものが中心です。

しかし、それは薬を飲んだ上で行ってください。逆に言えば、応急処置的とはいえ、薬にも認知行動療法の専門家と同じだけのうつを抑える効力があるのです。うつ病は自分一人では対処できないほど、深刻で威力のある病気です。その認識が必要です。

信頼できる医師と状況に応じたバランスの良い治療

うつ病の治療には、薬でうつ状態を軽減しながら、心理的な治療をしていくことが必要です。適応障害との診断が出た場合は、そのストレス因子のある環境への対処が必要になります。

これまでの説明や、ネットなどでも医師に対する批判があふれていますが、懸命に問題点を指摘し、真剣に病気と取り組んでいる素晴らしい医師の方々も多数いらっしゃいます。信頼できる医師や専門家の元で、状況に応じたバランスの良い治療を進めてください

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