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誤嚥性肺炎を予防する食事介助の留意点!むせにくい体作りの方法とは

食事介助の風景

日本人の死因、上位3位は、がん・心疾患・脳血管障害です。ですが、死因の第4位となる割合を占める疾患が、肺炎だということはご存知でしょうか。肺炎は、65歳以上では死因の第4位であり、90歳以上ではその順位を2位まで上げています。

肺炎になる原因はいくつかありますが、その中でも高齢者に高い確率でおこるのが、誤嚥性肺炎です。身近な人にその危険が見られたときにも、慌てずに対処できるよう、知識や予防方法を学んでおきましょう。

誤嚥性肺炎はどのようにしておこるのか?詰まる場所や起こしてしまう理由

誤嚥性肺炎は、本来であれば食道を通って胃に入るべき物が、誤って気管や肺に入ってしまうことで起こる肺炎です。食べ物や飲み物のほか、口の中の菌や唾液でも、誤嚥性肺炎を起こす原因となりえます。

嚥下と誤嚥のメカニズム

私たちが物を食べるとき、まずは口の中で噛み砕き、それからゴクンと飲み込みます。飲みこんだ食べ物は、食道を通って胃へと送り込まれ、消化・吸収されて体内に取り込まれ、生きるためのエネルギーに変換されます。

口から食道へと物が通るときが、誤嚥の原因となるポイントです。口から身体の中へとつながる器官は、食道だけではありません。のどの奥で二股に分かれていて、胃への通り道である食道の他に、肺へとつながる気管もあるのです。

咽頭の断面図と各名称

上の図のように、食物を取り込むためにある食道と、呼吸のためにある気管は、非常に近い位置にあります。物を食べて飲み込むことは、普段何気なく行っている動作です。しかし実際は、とても複雑な動きをして、その使い分けをおこなっているのです。

口から入った食べ物は、身体の機能が正常に働けば、滞りなく食道へと運ばれて飲みこまれ胃へと送り込まれます。ですが何らかの理由で、間違って気管や肺に入ってしまうことがあります。この状態を、誤嚥といいます。

高齢者が誤嚥性肺炎を起こしやすくなる理由

高齢になると、身体のさまざまな機能が低下します。それは、食べることや飲みこむことについても同じです。

咀嚼力・嚥下力が弱くなり、舌の動きも悪くなる
咀嚼は噛むこと、嚥下は飲みこむことです。これらの力が低下することで、口に入れた食べ物を噛み砕き、唾液を混ぜながら飲みこみやすい形にまとめ、口の中から食道に食べ物を送り込むことが、スムーズにできなくなっていきます。
喉頭蓋がうまく閉じなくなる
のどには、胃につながる食道と肺につながる気道とを分ける、喉頭蓋という弁があります。この喉頭蓋が、飲み込むのに合わせたタイミングでうまく閉じなくなることも、高齢者に誤嚥性肺炎が多くなる理由のひとつです。
反射能力の低下
高齢になると、反射的な運動が鈍くなります。普通は、気管に異物が入ると、苦しくなったり違和感を覚えたりして、吐き出そうと咳込みます。高齢になるとこの反射が鈍くなり、気管に入った異物をうまく吐き出せなくなるのです。
唾液の減少
高齢になると全体的に水分が足りなくなり、唾液の分泌量も減少します。唾液には、口腔内をきれいに保つための、抗菌作用や自浄作用があります。唾液が減少することで、口の中に菌が繁殖しやすくなるのです。
抵抗力の低下
歳をとるにつれ、身体の中に入った菌への抵抗力が低くなっていきます。免疫細胞をつくる胸腺や、免疫機能を持つリンパ球をたくさん含んだ脾臓が、加齢に伴って委縮していくからです。

飲みこみが悪くなったり、反射能力が低下したりすることは、脳血管障害などの病気でも、後遺症として現れることがあります。加齢だけが原因で起こることではありませんが、高齢者には一般的に多く見られる現象です。

誤嚥性肺炎を予防するために必要なこと

普段から飲みこみにくさを感じている方や、食べるときにむせこみやすい方は、特に注意が必要です。誤嚥性肺炎をおこさないようにするために、まずは普段の食事について見直してみましょう。

食事の時の姿勢に気をつける

食卓で、イスに座って食事をする方もいれば、床に敷いたざぶとんに座って食事をする方もいるでしょう。車イスや、ベッド上での食事をされる方もいるかもしれません。どのように食事をとる場合にも、その姿勢について考えてみてください。

人体の構造として、身体の胸側に気管があり、背中側に食道があります。寝そべり気味だったり、あごを仰け反らせたりすると、気管に入りやすくなります。逆に少し前かがみになれば、食道へと食べ物が送られやすくなります。

器官と食道の圧迫を意識した姿勢の比較

普段ベッドに寝ていることが多い方でも、座ることができるのであれば、できるだけ座って食事をとりましょう。イスに座る方が安定した姿勢がとれますが、車イスに座って食べる場合でも、少しの工夫で安定した食事姿勢をとることができます。

やむを得ずベッドに寝たまま食事をとる場合でも、できるだけ上半身を起こして食事をしましょう。誤嚥を防ぐほかにも、一度飲みこんだものが胃から逆流してくるのを防ぐ意味もあります。横に倒れたりしないようにクッションなどを当て、安定した姿勢がとれるように工夫しましょう。

誤嚥性肺炎を防ぐ椅子に座って摂る食事とベッドに寝てとる食事の方法

食べ物の大きさや形に気をつける

誤嚥予防のためには、食べ物や飲み物の形を工夫することも効果的です。「パサパサ」「ボソボソ」した食べ物はむせこみやすいものが多く、「トロ~リ」「しっとり」した食べ物は飲みこみやすいものが多いです。

飲みこみにくさの程度は、専門科のある病院で、唾液や水などの飲みこみを診たり、聴診や内視鏡検査・造影検査などの検査をして測ります。他にも、痰や咳の出やすさや、飲みこんだ際に体中の酸素がどれだけ少なくなるかなども、診断基準になります。

「ちょっと飲みこみにくいな」という方と、「何を食べても、よくむせる」という方とでは、食べやすい食事の形は違います。形がある食事の方が美味しく感じるものですが、工夫次第で、ペースト状の食事も美味しそうに見せることができます。安全を考え、状態に合わせた工夫をしましょう。

飲みこみの状態 食べやすい形
軽症 柔らかいもの
軽症~中くらいの症状 一口大の食事・粥・ポタージュ・かぼちゃの煮物など
中くらいの症状 ペースト・ムース・とろみをつけた水分
中くらいの症状~重症 ゼリー・ヨーグルト・卵どうふ

個人差や好みによっても変わってくるので、この表はあくまでも目安です。中には、「のみこみがとても悪いのに、好物だけはむせずに食べられる」なんて方もいますし、逆に「むせにくい形状の食べ物のはずなのに、よくむせる」なんて場合もあります。

「身体の状態に合わせた食事を用意するのが難しい」という方もいるでしょう。そんな時は、高齢者向けのお弁当やお惣菜を活用することも考えてみてください。レトルトや冷凍食品は専門店での通信販売もありますが、薬局などでもレトルトや瓶詰のものが販売されています。

食事に集中できる環境をつくる

考え事をしていたり、作業をしながら食べていたりすると、食事に対する意識がおろそかになります。口に入れた食べ物を噛んでいるとき、うっかり口の中を噛んでしまったり、口からこぼしてしまったりすることはありませんか?

そういった「うっかり」は、大抵、食べることから意識が逸れてるときにおこります。飲みこみに問題のない方なら、その程度のことでむせることは少ないかもしれません。が、普段から飲みこみにくさを覚えている方は、注意が必要です。

のどが飲みこむ用意をしていないのに、食べ物が送り込まれれば、むせや誤嚥につながります。口の中に入れた食べ物をどこの歯で噛んでいるのか、十分に噛んで柔らかくまとまったか、自分が飲みこもうと思ったタイミングでのどに送り込めているかを、意識しましょう。

ただし、意識しすぎて緊張すると、かえって飲みこみにくくなくなる方もいます。飲みこみにくさやむせやすさの程度によっても、意識的に気をつけなくてはいけない度合いは違います。

食事は生きるために必要不可欠なことですが、楽しみとしても重要なポイントです。テレビを見ながら、家族や友達とおしゃべりしながら、和気あいあいと食事をとるのが楽しみだという方もいるでしょう。自分に合ったペースで、安全に食事がとれるよう、環境についても工夫をしましょう。

むせこみにくい体をつくる

食べるためには、身体のさまざまな部分が機能しています。唇を閉じて、舌を動かしながら歯で噛み、舌でのどに送り込み、喉頭蓋で気管にフタをして飲み下します。これらの器官がうまく動くよう、普段から運動をして鍛えておきましょう。

体をリラックスさせる
まずは、首回りや肩など、のどの周りを支える筋肉をほぐしましょう。ゆったりとした気持ちで、心を落ち着けておこなうことが大切です。

むせこみにくい体をつくる体をリラックスさせる方法

口の運動
口のまわりの筋肉を鍛えることで、口からぽろっとこぼしてしまう食べこぼしが防げます。一つ一つの動きを意識して、大きく口を動かしましょう。

むせこみにくい体をつくる口の運動方法

舌の運動
意識して口を大きく開け、舌を動かしましょう。舌を無理に伸ばしすぎて痛かったり、舌を出しすぎて気持ち悪くなるほどまでやる必要はありません。できる範囲でおこないましょう。

むせこみにくい体をつくる舌の運動方法

この運動は、食事の前の準備運動としても効果的です。食事の前に口の運動をすることで、いざ食べ物を口に入れたときの一口目から、舌や唇など器官がスムーズに動くからです。食事とワンセットに考えて、習慣づけられると良いでしょう。

これらのほかにも、普段からよくおしゃべりをしたり、歌を唄ったりすることも、とても良い運動になります。また、運動をするだけでなく、口の中を良い状態に保つことも重要です。毎日の歯磨きやうがいを習慣づけ、口を潤すための水分も多めにとるようにしましょう。

口から物を食べられなくなった時に、考えなくてはいけないこと

もしも口から食べることができなくなったとき、人間は食べないままで何日も過ごすことはできません。高齢の家族がいる場合、口から食べられない体になってしまったときにどうするか、機会があれば家族で話し合い考えておくと良いかもしれません。

判断を迫られたときには、悩むための時間的なゆとりがない場合もあります。誤嚥性肺炎のリスクが極めて高くなったり、口から食べられなくなったりしたときには、経管栄養を提案されることもあります。あらかじめ知識を得ておき、いざというときに慌てないようにしましょう。

経管栄養とはどういうものか

胃や腸にチューブを通して、直接栄養を送り込む方法です。食べ物を噛んで飲みこむ必要がなくなります。飲みこむことが困難になっても、経管栄養にすることで、必要な栄養素の摂取は比較的安定しておこなえるようになるでしょう。

ですが経管栄養には、経管栄養の方法に合わせたケアが必要になります。経管栄養に使うチューブの交換や洗浄などの管理、口腔ケア、栄養剤の注入や調整、逆流や感染への注意など、食事をとるのとは別の手間が必要となるのです。

経鼻経管栄養
鼻の穴からチューブを入れ、鼻腔から食道を通って胃へとチューブを通し、栄養を送り込む方法です。もともと体に開いている穴を利用してチューブを通すため、経鼻経管栄養のための手術をする必要はありません。

ただし挿入が簡単な分、チューブを自分で抜いてしまう事故が起こりやすく、感染をおこしたり、胃からの逆流物や唾液による誤嚥の危険があります。鼻からチューブを通すために内径が細いので、詰まりやすく、栄養の注入にも時間が長くかかります。

胃ろう
おなかと胃に穴を開け、胃に直接チューブを入れる方法です。おなかを服で隠してしまえば、胃ろうをしていることは外からは分かりません。経鼻栄養と比べると、栄養の注入にかかる時間は短く済みます。

ただし、体に穴を開ける手術をするので、相応の管理が必要です。皮膚のただれや、栄養剤の漏れや逆流には、特に注意しなくてはいけません。胃ろうを造設する方は、長期間にわたり胃ろうを使用することが多いので、口腔ケアにも配慮する必要があります。

腸ろう
なんらかの理由で胃ろうができない場合、腸に直接栄養を送り込む方法があります。胃を介さないため、注入した栄養が逆流するリスクは少なく済みます。が、チューブが細いために詰まりやすく、管理に注意が必要です。チューブの交換には、入院を要します

このように、経管栄養にした場合にも、様々なリスクが生じます。また、誤嚥のリスクもなくなるわけではありません。口から物を食べることがなくなっても、注入した栄養剤の逆流や、唾液や口腔内の菌などが、誤嚥性肺炎の原因となることもあります。

また、経管栄養により、痰の吸引が必要となる場合もあります。夜間も痰の吸引が必要なケースもあるため、施設入所を考えている場合は施設の体制の確認が必要です。日中しか看護師がいない施設も多いため、夜間の痰吸引がおこなえない場合もあるからです。

どの方法が適応になるかは医師の判断と家族との相談によりますし、必ずしもこの範囲とは限りません。ですが、あくまで一般的な知識として得ておくと、いざというとき、医師と相談するときにも役に立つでしょう。

経管栄養から経口摂取に戻すためのリハビリ

口から物が食べられなくなり、一度は経管栄養となった場合でも、また口から食べられるように訓練をすることができる場合もあります。ストレッチやマッサージのほか、実際に食べ物を用いて飲みこみの訓練をするなど、専門の知識と技術を以ってリハビリをおこないます。

一度は食べることが困難となった体なので、訓練には苦痛もリスクも伴います。また口から食べたいという本人の意欲と、訓練をすることへの理解が必要です。リハビリをおこなえる病院や施設を探したり、リハビリを受けられるよう協力するなど、周囲の協力も欠かせません。

いずれにせよ、一度失った機能を取り戻すということは、容易ではありません。今は自分で食べられている場合でも、「むせやすくなった」「最近、飲みこみにくくなった気がする」と思った時には、少し気をつけてみてください。そこからの悪化防止に努めることが大切です。

いつまでも、口から食べる楽しみを大切にしよう

高齢になるほどにかかりやすくなる、誤嚥性肺炎。死亡のリスクももちろんですが、肺炎をおこして寝込んでしまえば、肺炎が治ったあと体力を戻すのも容易ではありません。それまでは元気だった高齢者が、一度の肺炎をきっかけに寝たきりになってしまうこともあるのです。

一度肺炎を起こしたあとはまだ口から食べられる状態だったとしても、その後寝込むうちに再度誤嚥性肺炎を起こし、繰り返すうちに口から食べられなくなるなんてことも考えられます。

普段の食生活を見直し、状態にあった形の食事をとることで、誤嚥性肺炎を予防しましょう。そして、飲みこむ力をつけたり、むせにくい体づくりをしたりすることを、普段から意識していくことが大切です。

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