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低温やけどが起りやすいシチュエーションは?その症状や処置、治療法

低温やけどと言う言葉は、数々の事故が報告されて一般に周知されるようになったことから、比較的認知度の高い言葉になっていると思います。しかし、低温やけどを起こしてしまった場合、どんなふうに症状が進むのかは意外に知られていません。

低温やけどと言うのは重症になりやすいやけどです。低温やけどは、高温によるやけどに比べて緊急処置がしにくく、往々にして手術が必要になりやすいやけどなのです。

なぜ低温なのにそこまで重症化するのでしょうか。もしものときのために、正しい知識、対処法、治療法を身につけておきましょう。

【記事中 症例写真あり】

低温やけどはお風呂より少し熱い程度の温度でも発生する

一般的なやけどと言うのは、皮膚が高温にさらされてたんぱく質が変性し、皮膚や皮下組織が破壊されることで起こります。たんぱく質の変性温度は、たんぱく質の内容によってまちまちですが、概ね60℃くらいが目安になります。

60℃ぎりぎりの場合は、「熱い」と感じて手を引っ込めれば、水で流すだけでやけどにまでは進展しないことも多いですね。一方、煙が上がったフライパンに触れれば、ほぼ確実に水ぶくれができます。200℃くらいにはなっているでしょう。

しかし、低温やけどと言うのは60℃より低い温度の物に触れ続けることで発生するのです。一体どうしてなのでしょう。

やけどがもたらされるのは温度×時間による

低温やけどだけではなく、普通のやけども時間と言う要素は重要ですが、私たちの感覚の中ではあまりその部分を意識することはありません。

しかし「この鍋熱いのかな?」と思った時、おっかなびっくりで一瞬だけ指先が触れるよう、引っ込めるスピードの方が速くなるような動作で、鍋に触れたことありませんか。

これは中に煮物が入った鍋であれば、高くてもせいぜい100℃前後です。そこに一瞬だけ触れた場合、指先の角質からその下の表皮の奥に熱が伝わるより早く手を引っ込めれば、温度は感じられてもやけどはしないと言うことになるわけです。

でも、危険ですから、そういうことはあまりしないで下さいね。鍋のそばに手の甲をかざせば、熱ければ温度が伝わってくるのが感じられるでしょう。

既に鬼籍ですが、私の知人に、かつて林業に携わっておられた高齢男性がおられました。煙管たばこが大好きでずっと吸っておられました。それほどヘビースモーカーと言うわけではなかったのですが、一度吸うと2~3回はたばこを詰替えて立て続けに吸うのです。

その時、火のついたたばこを火皿から手のひらにポンポンと叩いて落とし、器用に反対側の片手で煙管に新しいたばこを詰めます。そして、そこに手のひらの上のまだ燃えているたばこで火を点けて次の一服に移るのです。

その間じゅう、手のひらの上で火のついたたばこをコロコロと転がし続けていました。つまり、数百℃にもなる火のついたたばこであっても、動かし続けることで一点に長時間高温が触れることがないからやけどしないわけです。

もちろん、昔の林業従事者ですから、普通の人よりずっと手の皮が分厚かったと言うことも、そんなことができた理由なのでしょう。しかし、やけどが発生するには時間が重要であると言うことが良く判る例でした。

低温やけどは低温だから熱源に長時間触れてしまって起こる

低温やけどは、非常に長い時間熱源に触れ続けることで発生します。その温度と言うのは、44℃くらいから上と言いますので、熱めの温泉なんかでは時々見られるレベルの温度です。でも、温泉に浸かって低温やけどはありません。

これはその温度にどのくらいの時間曝されているかと言うのが重要になるからです。

44℃ 3時間~4時間
46℃ 30分~1時間
50℃ 2分~3分

50℃と言われると、さすがに触れた時に熱く感じるかもしれませんが、44℃なら気付かずにいてしまうかもしれません。特に就寝中だと気付かない可能性は少なくありませんね。

熱くてもそこから身体を離すことが困難な、身体の不自由なお年寄りや、乳幼児に低温やけどは多いのですが、一方で熟睡するとなかなか起きない若者にも結構発生しています。

低温やけどの難しいところはやけどの重症度に気付きにくいこと

低温やけどをしてしまった場合、最初は皮膚の表面が強く赤くなっているとか、水ぶくれができていてやけどをしたのが確認できるけど、お医者さんに行くかどうか迷っていると言うレベルであることが多いのです。

ところが、場合によっては一週間後ぐらいに非常に重い症状があらわれて、びっくりして病院に駆け込むと言うことになるかも知れません。

▼画像はクリックで大きなものが見られます

低温やけどとは短時間の接触では問題とならない程度の温度が、熟睡していたり、体が不自由だったりして長時間にわたって接触部に作用することにより生じるやけどです(図14)。

低温熱傷の症例写真

この画像ように、最初に比べてどんどん症状が重くなるのが低温やけどの特徴なのです。

実際に低温やけどは受傷直後には1度か2度にしか見えない場合が多いのですが、受診されるレベルの場合、全治数か月に及ぶことが多いんですよ。

芯から火が通ってしまう低温やけどは苦痛も大きい

低温やけどに気付く場合、「何となく赤くなっている」とか、「目が覚めたら水ぶくれができていた」といったケースであることが多いようです。つまり、発見した段階では1度か浅いレベルの2度のやけどにしか見えないんですね。

困ったことに、低温やけどでは初期の段階ではあまり痛みがありません。痛みが出てくるのは数日から1週間以上経ってからであることが^多いのです。

低温やけどを見つけた時にはすでに手遅れ

低温やけどを見つけた時には、まず熱源を遠ざけます。そして、実はそれ以上手当のしようがないので、病院に行って経過観察を行いながら治療してもらうだけです。

低温熱傷の特徴

「最初は大した事がないように見え、痛みもないのに、時間の経過とともに皮膚が死んでいく(ヤケドの傷が深くなっていく)」ことです。

(中略)

発見された時点で既に皮下脂肪層の壊死は確定しているわけなので、皮膚を冷却しようと皮膚に軟膏をつけようと,壊死した皮下脂肪を生き返られることは不可能です。

もちろん、被覆材で湿潤療法をしても意味がありません。同時に,低温熱源を除去してしまえば皮下脂肪層の壊死はそれ以上進行しないわけだから、その時点で何らかの治療をしてもしなくても脂肪壊死が更に悪化する事もありません。

要するに、低温熱傷は発見された時点で既にその後の運命が決まっていて、壊死した組織を生き返らせる方法がない以上、その運命を変える治療法は存在しないと考えます。

旧国立(現在は日本郵政の企業立)病院に、ここまで突き放した言い方をされると、ドキッとしますよね。でも、これが真実なのです。つまり、低温やけどはとことん予防に徹するべきものと言えるのです。

この病院も、手当はもちろんするけれど、それよりは予防に徹して欲しいのでこうした厳しい言い方をしているのだと思います。

普通のやけどは表面から奥へ順番に損傷する

まずは普通のやけどの重傷度合を見てもらいましょう。

高温によるやけどの熱傷深度

この模式図のように、普通のやけどでは熱源の温度や接触時間に応じて、表面からどんどん奥の方に損傷が進んで行きます。そのため、重傷のやけどでは、表から見た損傷がひどくなっているのがすぐにわかります。

ちょっとお湯がかかったと言う程度なら、すぐに流水でしっかり冷やせば、表面が赤くなっているだけの1度の熱傷と言うとこになり、外用薬を2~3日塗っておけば治ってしまいます。

もう少し強いやけど、例えば麻や綿用にセットしたアイロンに触ってしまったと言うような時になると、水ぶくれができることもありますね。これが浅達性2度のやけどです。

損傷は真皮の浅い部分までです。適切な治療を受ければ2~3週間で治りますが、この状態であっても面積が広くなると生命に関わらないとも限りませんので注意が必要です。

浅達性2度と同じ真皮の中でやけどは留まってているけれど、かなり奥の方まで損傷が進むと深達性2度と言うことになって、場合によっては植皮手術が必要になります。

一つの目安として、充分冷やしてから水ぶくれを押してみて赤みが消えたら浅達性2度、押しても色の変化がなく赤いままの場合、深達性2度の可能性が高くなります。

さらに、皮膚の領域を超えて、皮下組織の結合組織部分やさらにその下の筋膜や筋肉にまで損傷が及んだ場合を3度と言います。この場合は手術なしに治療はほぼ不可能です。

3度のやけどでは、皮膚と皮下組織の間を通っている知覚神経も損傷しますので、痛みを感じない場合があります。毛細血管も損傷しますので、焦げて黒や褐色になっていない場合、患部は青白く見えることが多いです。

低温やけどでは当初表面が無事に見える

次に低温やけどの場合を見て頂きましょう。

44℃~50℃くらいの範囲の熱源に触れた場合、熱さにびっくりして触れた部分を引っ込めると言う動作はそれほど素早く起きません。44~45℃くらいなら、全く気付かずそのままにしている可能性もあります。

低温によるやけどの熱傷深度

するとこの模式図のように、熱はじっくり奥の方に通って行きます。表皮の部分は外気とも接触していますから温度が下がりやすい上に、外皮部分は熱にも強いため、やけどの可能性に気付かないのです。

さらに熱が真皮部分に到達しても、低温やけどの場合、痛みがないことが多いので、あまり深刻に受け取らない人が多いと言うことが問題になります。

しかも、真皮部分には毛細血管が多いため、結構熱は逃げて行きやすいと言う特徴があります。それでもなお低温で長時間加温すると、マスト細胞から炎症関連物質が分泌されたり、真皮を構成しているコラーゲンが変性したりします。

さらに血管の透過性が亢進するため、血管から水分が滲み出して水ぶくれができることもあります。

そして一番問題になるのは、その下にある結合組織(皮下組織)です。結合組織は皮膚と筋肉・筋膜を繋ぐ組織で、ほとんどが脂肪でできた血管の少ない部位です。いわゆる皮下脂肪と言うのはこの部分のことでもあります。

低温やけどは体温より高く、瞬時に皮膚を損傷する温度よりは低い温度でじっくり加熱されることで起こります。その場合、熱の逃げ場がないこの結合組織が、最も大きく損傷すると言う傾向があります。

結合組織は、発生した熱的損傷に応じて、破壊され表皮を支えられなくなります。その結果、損傷部分の上の皮膚が壊死してゆきます。だいたい受傷後1週間前後で痛みが出だして、一気に症状が悪化する傾向が見られます。

このように、最初は大したことがないように見えても、低温やけどは多くの場合、3度のやけどに進行することが多いのです。

芯からじっくり火を通すのはお料理だけにしておきましょう。低温やけどは本当にシャレにならないです。特にお子さんの場合、痕が残りやすいので、心の傷にもなりかねません。

低温やけどの応急処置はほとんどないので直ちに受診する

やけどと言えば流水で冷やすと言うのが応急処置の基本です。しかし、このことは低温やけどにはあまり当てはまりません。それは、低い場合44℃~45℃で時間をかけて皮下組織が破壊された結果が低温やけどだからです。

普通のやけどなら、高温で短時間組織が損傷していますので、すぐに水で冷やすことによってより奥にある皮下組織にまで損傷が及ぶことを防げます。しかし、低温やけどではすでに一番奥の皮下組織が壊れているので、冷やすことにあまり意味はないのです。

低温やけどは痛まないので冷やして痛みを軽減する効果もない

低温やけどではあまり痛みがありません。ですので、水で冷やし続けることによって痛みを軽減すると言う効果もほとんど意味がないのです。

ただ、例えば50℃で数分間加熱されたために低温やけどが発生した場合などは、多少の痛みが伴っていたり、表面から奥の方への熱伝導の可能性が残っていますから、流水で数分冷やしてから受診すると効果的かもしれません。

もちろん高温によるやけどほどには症状を軽くする効果はありませんが、やっておいた方が良いかもしれないと言うレベルの対処です。

低温やけどに気付いたらすぐに受診する

健康な成人でももちろんそうですが、高齢者や乳幼児、小児の場合は低温やけどに気付きにくいことが多いので、異常があったらしっかり確認してあげて下さい。また、糖尿病の方で血行障害・神経障害のある人も充分な注意が必要です。

あんかや湯たんぽなどの低温暖房用品が接触していた場所に、皮膚の強い赤みや水ぶくれがある場合は低温やけどの可能性があります。重症化する前に一度受診しておきましょう。

患部を5分ほど水で冷やして、滅菌ガーゼなど清潔なもので患部を覆って、すぐにお医者さんへ出かけましょう。低温やけどの場合、受傷してすぐの段階では受診するのが恥ずかしいと感じられるくらい軽症の場合も少なくありません。

しかし、その段階で受診するのは痛みもないし楽ですよね。痛みが強く出てから受診し、脂汗を流しながら初診の申し込み票や問診票に記入するのはつらいと思いますよ。

お医者さんでは、低温やけどの可能性に基づいたアドバイスを出されるでしょう。それに従ってしばらく様子を見ると同時に、痛みが出だしたらすぐに再度受診して下さい。

場合によっては、毎日の通院を指示される可能性もあります。そうしておくと症状が強く出た時にすぐに対応できますので安心ですね。

200度に加熱したフライパンにステーキ肉を投入して、強火で1分程度表面が焦げるくらい焼いても中は生ですよね。一方、低温調理器で55℃4時間加熱すると、芯まで火の通ったローストビーフができます。これと同じ原理なんです。

低温やけどに注意する器具がいっぱいあるので注意

低温やけどが良く報告されているのは湯たんぽです。湯たんぽは寝る時に使う道具なので、布団の中に入れたままにして使用するとかなり危険です。また、同じ理由で電気あんかや電気毛布なども危険が伴います。

また、温風機、ファンヒーター、ストーブ、電気カーペットなども低温やけどに繋がる道具ですので、使い方には充分注意して下さい。

設定可能なものは体温以下に設定する

例えば電気毛布などでは、設定によって36℃前後にできるものがあります。本当は寝る前に布団を温めておいて、寝るときにはスイッチを切るのがベストですが、どうしても点けておきたいと言う人は体温以下に設定してください。

冷静に考えれば、36℃と言うのは夏場ならエアコンをつけっぱなしにして寝る温度ですよね。20℃台の設定がベストだろうと思います。

一方、湯たんぽですが、これが割合難しいのです。おそらく昔の常識がどこかに残っているのでしょうね。それが「湯たんぽは寝る時に布団の中に入れておくもの」と言う感覚をもたらしているのでしょう。

ずいぶん昔、湯たんぽが金属製であった時代には、寝る前にお湯を注いだ湯たんぽを布でぐるぐる巻きにして布団に入れ、朝起きたら人肌程度にまで冷めたそのお湯で顔を洗っていました。給湯器や湯沸かし器が存在しなかった時代のお話です。

じゃあ、その頃には低温やけどがなかったのかと言うと、かなり多くあったのだと思います。むしろ高温の湯たんぽから湯が漏れて大やけどと言う事故が多かったので、それに紛れてしまっていたのかも知れません。

現代の新しい常識として、湯たんぽは就寝時には取り出しておいて下さい。電気あんかも同じで、就寝時にはスイッチを切って布団から蹴り出しておきましょう。実際、電気あんかによる低温やけどの重傷事故も結構あるんですよ。

特に、注意してほしいのは、そういう発熱体の上に身体や手足を乗せたり、脚で挟み込んだりしないことです。単に温度が高くなるだけでなく、そこに圧力が加わると重症化しやすくなります。

電気カーペットの上で寝ない

電気カーペットは暖房器具ですので、結構表面温度は高くなります。もちろんカバーがかかっているでしょうが、それでもその上で寝たりすると低温やけどの可能性は充分にあるのです。

上で寝ると言うことは発熱体に当たっている身体の部分に圧力がかかると言うことでもあります。つまり重症低温やけどを発生させる条件の一つが整ってしまっていると言うことになります。

さらに、小さなお子さんを上で寝かせるのは危険極まりません。設定温度が30℃程度なら問題ないと思いますが、特に寒い日などで「ついうっかり」高温に設定していたら、子供の生命に関わりかねません。絶対にやめましょう。

同じようなことはファンヒーターやストーブ、温風機、赤外線こたつなどの暖房器具でも発生します。身体の同じ面をずっと暖房器具に向けてうたた寝していたりすると、温風や赤外線が当たっていたところがじっくり芯から焼かれてしまいます。

ストーブに当たっている時、服を着ていたら服の表面が熱くなっているのに気づかず、姿勢を変えた時にその部分が肌に当たって「熱つつつ」ってことも良くあります。

これだけなら滅多にやけどにはなりませんが、服の素材によっては、ストーブなどで熱せられて内側に赤外線を出し、それによって低温やけどが起こる場合もあります。くれぐれも暖房器具のそばで寝てしまうことは避けて下さい。

こたつと言えば猫ですが、彼らは毛皮と言う強力な断熱材で身体を覆っているので大丈夫なんでしょう。二頭飼い以上の冬の猫はストーブの前の場所取りに夢中になって、毛が焦げてることもあるんですよ。

ポイントは体温以上にしない事と異常に気付いたら受診すること

この他、使い捨てカイロによる低温やけども結構発生しています。靴の中に入れていたり、服の下に入れてベルトで締め付けていたりして事故は起こっています。使い捨てカイロはできれば位置が固定されないようにした方が安全ですね。

皮膚感覚で「熱い」と感じたらすぐに場所を変えるか、取り外してしまいましょう。就寝中に使用しない方が安全ですし、貼るタイプの物は寝る時に使ってはいけません。

ポイントは、身体の同じ部位を温め続けると、低温やけどが発生すると言うことです。睡眠中と言うのは、うたた寝であっても低温やけどの条件がそろう可能性があるので、特に発熱器具を身体のそばに置かないようにしましょう。

そして、一旦低温やけどが発生したら一般人にできることはあまりありません。すぐに受診して医師の診断と指示を仰いで下さい。

低温やけどは、軽くても色素沈着、多くの場合瘢痕を残しますから、まず低温やけどにならないよう注意しておくことが最も重要なのです。

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