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印刷工場の社員が胆管がんになってしまう原因は特殊溶剤?

若者が突然亡くなって行く!?

2012年、ある印刷工場で20~30代の若い社員の方々が突然胆管がんになり、次々に亡くなるという事件がありました。新聞やニュースでご存知の方も多いと思います。このような労働災害は、今まで数多くありました。

元々、労働災害は、炭鉱夫は石炭を掘る時に出る細かいチリが呼吸器系の炎症を起こし、喘息が多くじん肺という病気になることが多かったようです。これに端を発して、職業による労働災害に関して戦前から整備されてきました。

そのために、労災保険というシステムが確立し治療費などを健康保険とは別枠で保証する制度も確立しています。つい最近では、建物の断熱などでに使われていたアスベスト(石綿)による肺がんが記憶に新しいところでしょうか?

アスベストに関しては、作業着を毎日洗濯していた奥様が、作業着についたアスベストを少しづつ吸い込んで肺がんに至ったケースや、工場から近所の住宅までアスベストが飛散して肺がんになったケースもありました。そのため、今では古い建物の解体にはアスベストが飛散しないような工法が求められています。

印刷工場と胆管がんの関連性

胆管は、胆のうから十二指腸に胆液という消化液を送り込むための器官です。印刷工場の業務とは全く関係がないのは明らかです。今回、事件性になったのは印刷を落とす工程で使った溶剤が原因のようです。

よく落ちるということで、使われていた溶剤のようでしたが、猛烈な匂いで工場内の換気が悪く実際に印刷を落とす工程に従事していた方はもちろん、工場全体にその溶剤の匂いや成分がかなり濃い状態で充満していたようです。

労働者の健康を守るための法律では、このような溶剤は「有機溶剤」「特殊化学物質」というように事細かく、扱い方や工場内の換気・それらの物質を扱う従業員の物質別の特殊健康診断が義務付けられています。今回のケースでは、これらに違反したということで労働基準監督署に摘発されたようです。

また、この溶剤については、アメリカでは2000年にはすでに人体の悪影響が大きいということで使用が禁止されていましたが、日本が使用禁止にしたのは2013年に入ってからなので、国の責任も大きいと思います。

それまで、知らずに数年間使っていたわけですから、亡くなった方及び胆管がんに罹患された方は気の毒でなりません。

危険溶剤と医学的研究

この事件を受け、調査をし始めたものの、大きな壁に阻まれています。各医療機関で胆管がんと診断された患者の調査をしましたが、健康保険として利用しているため、カルテには職業や使用した溶剤の情報までは記載されておらず、胆管がんと溶剤の因果関係を特定するには、困難な状況です。

また、複雑な化学物質ごとのカラダの影響についての臨床研究も完全とはいえません。その上、この不景気の中デフレや取引停止による状況下で、中小・零細企業に労働環境を改善する資金もあるとはいい切れません。

まして、労働保険未加入の非正規労働者(派遣社員)であれば、労災保険は適用されず泣き寝入りになります。今回の事件では、産業医の活動がなかった期間もあり、労働環境悪化の放置についても労働基準監督署では重く受け止めています。

大企業であれば環境問題のコンプライアンスや企業イメージ向上のために、いろいろな取り組みをしていますが、日本の大部分を占める中小企業の実態とはこのようなことなのかも知れません。

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